ビジネス

2021.06.05

【独占寄稿】Box創業者が経験から語る「起業の秘訣」

Box共同創業者兼CEOのアーロン・レヴィ


それと、自分でも信じられないくらいに情熱を注げることをしているかどうか。「とりあえず最適化しよう」という思いつきだけで生まれた会社が多すぎる。ペットフードをネットで買えるようにする、とか。ひょっとすると黒字化して、うまくいくかもしれない。でも、3年後、5年後、10年後には気持ちも、世の中の風向きも変わってしまう可能性だってある。多くのビジネスが、こうした“バブル”の中で生まれてしまいがちだ。これが後々、悲劇になる。

ポストコロナの世界では、スタートアップにどのようなチャンスがあるのか? 


我々は今、歴史的に見ても、最も劇的なテクノロジーとビジネスオペレーションの転換期にある。実際、多くの企業がたったの数週間でビジネスモデルをデジタル化しなければならなかった、と言っても過言ではない。

新しいビジネスが生まれ、新しいタイプの企業が新規顧客を世界規模で一気に獲できるようになった。Zoom(ズーム)、WebEx(ウェベックス)、Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)、Slack(スラック)など、ビデオ会議アプリやチャットツールを使えば、ほぼ完全にクラウド環境で会社を運営できる。

ボックスのようなアプリやプラットフォームからデータにアクセスすることだって可能である。新型コロナウイルスのパンデミックが、クラウドへの移行、IT部門の近代化、デジタル化など、企業が進めてきたトレンドを加速させたのだ。

新興国のスタートアップ企業に対する考えは?


現在の市場の多くは、かなり過小評価されている。市場規模を一桁まちがえていたほどに。前出のビデオ会議アプリ「ズーム」がよい例だ。コロナ禍が到来するまでは、対面で会議ができない企業勤めの人2000〜3000万人向けのツールと考えられていた。それが今や、10億人が使っている。利用者が10億人ともなれば、莫大な金が動き、市場が生まれる。

それならば、Twilio(ツイリオ)のような通信技術APIソフトで、すべてがデジタル化され、リアルタイム通知が送信できるようになった場合はどうなるか? このような新しいプラットフォームに移行できるものはどれくらいあるだろうか?

そのほかにも、Shopify(ショッピファイ)がeコマースで行ったこと、Atlassian(アトラシアン)がデベロッパー向けに提供したサービスについても考えてみてほしい。これらの企業が創出したTAM(獲得可能な最大市場規模)は、我々が想定していたよりもはるかに大きい。

多くの起業家は、既存の市場を念頭に、より良く、より安く、より速いサービスを開発し、市場規模を数倍にすることを考えていると思う。ところが何かを10倍も効率化すると、市場全体が100倍も大きくなるものだ。そして、その市場から“障壁”を取り除いた場合はどうなるか?

例えば、ツイリオを使った通信、ショッピファイを使ったeコマースサイトの立ち上げなどである。カテゴリー内の不要な“障壁”を減らせば、獲得可能な最大市場規模を拡大できる。我々は、あらゆる市場が以前の3倍、5倍、10倍、100倍に成長する瞬間を目の当たりにしているのだ。
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文=アーロン・レヴィ 写真=ボックス提供 編集=フォーブス ジャパン編集部

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