東京五輪延期を機に引退したアスリートが今、ビジネスの世界で始めた挑戦


アスリートのメンタルの鍛え方を応用


ある日、ビジネスコーチングの存在を知った。ビジネスコーチングとは、対話を重ねることを通して、クライアントが目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することを支援するプロセスのこと。

ここ数年、ビジネス界で急速に注目が高まり、多くの企業が社員教育にコーチングを導入している。ヤフー株式会社の成長を支えているとされる有名な「1on1ミーティング」も、広義のコーチングと言っていいだろう。

カウンセリングともコンサルティングとも違い、質問や傾聴によって相手が目標達成するための気付きや行動変容を引き出すコーチングは、まさに外村さんがやりたかったことそのもの。注目されているぶん有象無象が参入している分野でもあったが、自分は10代の頃からセルフコーチングをしてきた自信がある。



「これだ、と思ってコーチングについて調べたところ、認知度が高いだけあり、既に理論が体系化されていました。それはありがたかったですね。コーチングについて学べるスクールもあったので、引退してすぐに通いました。

ライバルも多いし、簡単にうまくいくビジネスだとは思っていませんが、世界一を経験したコーチはほかにあまりいないだろうと(笑)。僕が実践してきた好きなことを突き詰める姿勢、困難に対する解決策の見つけ方などを伝え、あらゆる業種・職種で働く人たちをサポートしていきたいです」。

いつかはスポーツ界への恩返しを


コロナ禍で人に会えない状況も、外村さんの素早い事業開始を後押しした。PC用の大きなモニターやウェブカメラを買い揃えると、引退から2カ月後の8月に起業。

現在は基本的にオンラインで、“しなやかメンタルクリエイター”としてパーソナルコーチングを行っている。



「今はまだ手が回りませんが、ゆくゆくはアスリート向けのコーチングもやりたいと思っています。コーチングだけでなく、スポーツやトランポリンがより発展していくために、いろいろなかたちで貢献できれば。いわばスポーツ界への恩返しですね」。

そう言いつつ、既にスポーツ関連ビジネスへ向けても動き出している。誰もがトランポリンで遊べる施設「トランポリンパーク」の運営もやりたいことのひとつなのだという。

「いろいろな施設へ遊びに行かせてもらっているのですが、トランポリンパークって本当に楽しいんですよ。トランポリンの楽しさをより多くの人に知ってもらうには、こういった施設の拡充が不可欠。コロナ禍でも客足は落ちていないようなので、タイミングを見て本腰を入れて検討したいと思っています」。

さらに、一般社団法人日本舞踊スポーツ科学協会や美活整体サロンのアンバサダーを務めるなど、精力的に活動する外村さん。これまでトランポリンへ全力投球してきたエネルギーを、引退後はビジネスにすべて注いでいるので、いわゆる「心にぽっかり穴が開いたような」状態とは無縁。寝る間もないほど忙しいのだそうだ。
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写真=赤澤昂宥 取材・文=岸良ゆか

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