コロナ禍で住宅価格上昇の米国、予測外の動きが起きた理由

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──それはどういうことでしょう?

私のアドバイスに従って住宅用不動産の購入を思いとどまった人たちは、誰もが多額の出費を強いられることになった。2020年春の時期を振り返ると、住宅価格は4月には前月比で18%、5月には前月比で10%下落した。しかし6月に入ると21%と大幅に上昇したのだ。2009年と同様に大幅に下落するという私の読みは外れ、住宅価格は高騰した。一部では、10~20%も上昇したケースもあった。これは、誰の目から見ても、重大な読み間違えだ。

──未来のことなど誰にもわかりません。予測が当たったという人もいますが、それは運が良かっただけでしょう。

2021年3月21日付のCNBCの記事で不動産担当記者のダイアナ・オリック(Diana Olick)は、「住宅市場は、コロナ禍の中で驚くべき活況に沸いた1年を経て、今、転換点に立っている」と述べている。不可解なほどの不動産価格の上昇に関しては、オリックはこう書いている。「これを予測できた者は誰もいなかった。エコノミストも、不動産業者も。特に、全米の住宅建築業者にとっては寝耳に水だったはずだ。だが、パンデミックは人々の感情に火を付け、これまでにないほどの住宅購入ブームが起きた」

そう、読み間違えたのは自分だけではないとわかると、多少は気分がマシになる。

──誰にとっても予測外だったのは間違いありません。

オリックが指摘したキーワードは「感情」だ。それが何を扱う市場であれ、市場とは人間の感情によって動かされるものだということを、私は改めて思い知らされた。私のなかの合理的な部分は、「こんな現象は非合理的だ」と切って捨てたくなるが、感情がすべての市場を動かしているという事実は、本質的に合理的なものだ。そして、人間の感情が市場を動かすという合理性があるゆえに、「将来の市場の価格を正確に予測することは不可能だ」という事実も、理にかなったものとなる。

──確かに、コロナ禍での生活では、感情に多くの負荷がかかります。

住宅市場を動かした感情について、オリックはこう指摘している。「この熱狂的なブームは、非常に感情的なものだった。これには、全米の国民が突然、日常生活の大半を自宅の中で過ごさざるを得なくなったという事情がある。ゆえに、居住空間が重要な資産となった。さらに、10回以上も史上最低を更新するほどに住宅ローン金利が下落し、住宅購入の魅力が増したことも、これに拍車をかけた」

我々の生活のあらゆる側面にカネが関わっているのと同じように、人の感情は、金銭に関わる決定を後押しする力になる。これまでの事例や論理的な面から見れば、私の予測は妥当なものだった。自明の理と言っても良いほどだった。だが、予測は外れた。どんな市場であれ、今後の価格変動について確信を持って断言する専門家を信じて投資判断を行うことにはリスクが伴う、ということなのだ。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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