米女子高生の卒業スピーチに注目、「中絶全面禁止」に抗議

Nay Ni Ratn Mak Can Thuk / EyeEm

米テキサス州の高校の18歳の女子生徒が、5月30日の卒業式のスピーチで、妊娠中絶を事実上、全面禁止にする州の新法に反対する熱弁を振るい、全米の注目を集めている。

ダラスのレイク・ハイランズ高校の卒業生総代を務めたパクストン・スミスは、州で新たに成立した「ハートビート法」のことが頭から離れず、両親からの許可を得て、メディアを意識したスピーチを行ったと、D Magazineの取材に語った。

「私は、私たちの体に対する戦争、私の権利に対する戦争が起こっているときに、この場所で黙っていたくない」と語った彼女のスピーチは、その後の数日間でネット上で大きな話題となっている。



テキサス州で先月成立したハートビート法は、超音波検査で胎児の心音が探知できた場合、つまり妊娠6週目以降の中絶を違法とするものだ。多くの女性はこの時期に妊娠を自覚できず、レイプや近親相姦による妊娠も例外とならないことから、事実上「中絶の全面禁止」と捉えられている。

スミスは、中絶する権利を奪われたことを「心が痛む」「非人間的な行い」と述べ、女性から選択権を奪う法律を非難した。

「私には夢と希望と野望がある。この学校を今日、卒業する女の子たちもみんなそうだ。将来のために努力を重ねてきた。しかし、私たちの意見や同意なしに、未来を決める権限が奪われてしまった」とスミスは話した。

スミスによると、スピーチの後、学校関係者は彼女の卒業を保留にすることを検討した模様だという。しかし、無事に卒業証書を受け取った彼女は、秋にテキサス大学オースティン校に進学する予定だとD Magazineに語っている。

テキサス州は、全米で長年続いている中絶論争の新たな戦場の様相を呈している。テキサス州ラボック市は、独自の条例で「胎児のための聖域都市」を名乗り、中絶を禁止するだけでなく、中絶手術を行った女性の親族が、その手術を行った医療機関を訴えることを可能にしている。

女性の地位向上を訴えるNPO団体「プランド・ペアレントフッド(家族計画連盟)」は、この条例の撤廃を求める訴訟を起こしたが、米国の連邦判事は先日、この訴えを却下しており、ラボック市と同様な動きに出る都市が増える可能性がある。

テキサス州のハートビート法は9月に施行される予定だが、専門家はこの法律が裁判で争うための格好の材料になると述べており、プランド・ペアレントフッドもこの法案と闘うことを宣言している。

編集=上田裕資

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