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「ダイバーシティ(多様性)」の重要性が叫ばれている。しかし、街に出るとどうだろう。どの街にも同じようなブランドや看板が散見され、代わり映えのない風景が広がっている。同時に、COVID-19の影響を受け私たちの日常もどんどん均質化している。リモート生活で変化がない、遠出ができない、新しい体験がない……。どうすればこの均質から脱せるのか。多様性の源である生物の進化について、2人の偉大な「女王」から学んでみた。

「その場ににとどまるためには、全力で走り続けなければならない」

ルイス・キャロルの不朽の名作『鏡の国のアリス』のなかで「赤の女王」が発する意味深なこのセリフ。進化学や遺伝学の領域で、「環境の変化にあわせて常に進化し続けなければ、その種は絶滅してしまう」という解釈で有名だ。ビジネスの世界でも変化の重要性を語る文脈でよく使われるので、ご存知の方も多いと思う。


『鏡の国のアリス』より、白の女王(左)と赤の女王(右)に囲まれるアリス。

実は、『鏡の国のアリス』にはもう一人女王がいることをご存じだろうか。その名も「白の女王」。彼女も、同じように印象深いセリフを残している。少しだけ物語を覗いてみよう。

アリス「無駄ですわ。ありえないことは信じられないもの」

白の女王「…あなたはあまり練習をしてこなかったようですね。…私があなたくらいの年頃には、日に30分は欠かさず練習したものよ。時には朝食前に“ありえないこと”を6つも信じることができたほどよ」

「ありえないことを信じる練習をする」。不思議な言い回しだが、ここには均質化する日常を変えるヒントが隠されている。面白いことにこの言葉、生物が多様性を生み出してきた原動力として、海外の進化学者にも着目されているのだ。地球上の生物がこれほど多様になったのには、環境変化に受動的に適応する「赤の女王」的変異だけでなく、生物自らが能動的に生み出す「白の女王」的変異こそ重要だという仮説だ。だとするならば、生物の多様性を生み出してきたこの言葉は、僕らの生活を多様にするヒントにもなるはず。それが今回のコンセプトだ。


19世紀の生物学者ヘッケルの 「系統樹」。生物は共通祖先から多様に進化してきたと言われる。

具体的にはどうすればよいだろう。そもそも「ありえないことを信じる」とは何だろう。「ありえないこと」とは、当たり前に選択しているルーティンから逸脱すること。つまり常識、合理、効率、多数意見に反するもの。「信じる練習」とは、それを見つけたり楽しんだりして、少しだけ自分の一部にしてみること。いくつか具体例を紹介してみよう。

文=山根有紀也 イラストレーション=尾黒ケンジ

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