そうした人たちの中には、問題に対処する方法としてマインドフルネスに目を向ける人や、運動をしたり、日記を書いたりする人たちがいる。ストレスを軽減させるために、音楽に頼る人たちもいる──そしてその中には、音楽を職業とする人たちもいる。
X Japanのリーダー、Yoshikiはもう長い間、メンタルヘルスの問題と向き合ってきた。それは、父親が自殺した10歳のときからのことだ。抱える痛みをいくらかでも和らげよう、あるいは完全に取り除こうと試みてきたが、そのような経験が精神面に与えた影響は、消し去ることができない(そうできることが、理想的ではあるが)。
そしてYoshikiは、その経験を自らの生き方の一部としてきた。音楽業界が扱うのは芸術であり、芸術には痛みから生まれるものも多いと考えている。
コロナ禍が多大な打撃
Yoshiki が創設した非営利団体「Yoshiki Foundation America」が協力するミュージケアーズ(MusiCares、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーが1989年に創設した慈善団体)が行った調査によると、音楽業界に携わる人の26%が、中等症~重症のうつ病を経験しているという。
また、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)のパンデミック発生以降、メンタルヘルスの問題でカウンセリングを必要とした人は、回答者の35%だった。そのうち53.5%は、金銭的な理由でカウンセリングを受けることができなかったという。
経済的な不安があると答えた人は、51%にのぼる。そう答える人が多い理由の一つは、彼らの収入は大半が、ツアーから得られるものであるためだ。だが、そのツアーはパンデミックによって、基本的にはすべてが中止された(ツアーへの参加が全収入に占める割合は、アーティストが75%、舞台スタッフやクルーメンバーがほぼ100%となっている)。
ミュージケアーズのエグゼクティブディレクター、ローラ・セグーラは、「メンタルヘルスに打撃を受けるような困難を経験する可能性があるのは(アーティスト以外のクルーやメイクアップアーティストなどを含め)、音楽業界に関わるすべての人だ」と述べている。この1年は特に、精神面でのサポートとケアの必要性を際立たせたるばかりだったという。