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起業家たちの「頭の中」


熱量を伝播させる「言葉」の力


──ミッションを組織に伝播させる際の秘訣をお聞かせください。

私はよく「組織全体を真っ赤に染める」と言いますが、それくらい、あらゆる手段を通して起業家の熱量を組織の末端まで浸透させていかなければ大きな組織に成長することはできません。

ここで重要なのが、大きな組織に成長できるかどうかは「ミッションの大きさと意思の深さ」に関わっているということ。「ミッションの大きさ」、つまりは事業の大義と、「意思の深さ」、つまりは起業家自身の思想、人格そのものが、発するすべての「言葉」に染み込むのです。

聖書に「始めに言葉ありき」とあるように、やはり「言葉」というものが持つ力は絶大です。

組織の中で「言葉」を伝える手段としては、たとえば京セラやKDDIがコンパをやっていたり、レノバの場合はミニ合宿や全社員が一堂に介する社員会・式典を定期的にやったりと様々あるでしょう。

しかし肝心の言葉自体に「深さ」がないと、組織全体には伝播していかないのです。

経営が「チーム」であるべき理由


──「真っ赤に染める」一方で、起業家が間違った方向に行くことの抑止力も必要なのではないでしょうか?


ミッションは共有しながらも、多様性を持ったトップマネジメントのチームが必要です。

私が第二電電を始めた時も、稲盛和夫さんという日本を代表する偉大な先輩経営者がいて、稲盛さんがリーダーシップを発揮し、私たちが一生懸命実行するという経営チームでした。イー・アクセスもエリック(エリック・ガン氏)というファイナンスのプロがいたからこそ、あれだけ大きな会社へと成長しました。

起業家がいくら天才的であろうと、企業のトップマネジメントはチームでないといけません。なぜならば個人と言うのは、絶対に誰しもが欠点を持っているからです。そして、1人の力には限界がある。

性格やプロフェッショナリズムは違っていてもいいので、ミッションを共有している人とマネジメントチームを作れるかどうかが鍵でしょう。

──なかなか若い起業家メンバーだと人材が定着しないという問題もよく起こります。

社外の知恵や意見を取り入れるという視点も重要です。

たとえば、シリコンバレーのベンチャーなどは、若いベンチャーにシニア人材を入れることを意図的にやっています。彼らは何十年にもわたる知識・経験・失敗成功のアセットを持っていますからね。私の社会的ミッションも、若い起業家に対してアドバイスや激励、時には警告を与えることだと思っています。

これはシニアに限らず、社外取締役やアドバイザー、友達でもいいのです。社内にいるだけではわからないことを意見してもらえる、社外で信頼の置ける他社の存在を持つことが重要です。

そのような社外メンバーを持つためには、起業家が意見を謙虚に聞く傾聴の姿勢を持つことが大切です。これがないと、誰も意見してくれなくなります。

多様性のあるトップマネジメントチームを作ること。そのために起業家が傾聴の姿勢を持つこと。これが大きく成長するベンチャーには必要なことだと思います。


千本倖生(せんもとさちお)◎京都大学工学部電子工学科卒業、フロリダ大学Ph.D。日本電信電話公社(現在の NTT)入社後、1984年に第二電電株式会社(現在の KDDI)を稲盛和夫氏らと共同創業し、専務取締役、取締役副社長を歴任。1995年に慶應義塾大学、大学院教授に就任。その後カリフォルニア大学バークレー、カーネギーメロン大学の客員教授などを経て、1999年にイー・アクセス株式会社を創業。代表取締役社長、代表取締役会長などを歴任。2005年イー・モバイル株式会社を設立し、代表取締役会長CEOに就任。2014年4月に株式会社レノバ社外取締役に就任。2015年8月より代表取締役会長に就任。2020年4月より取締役会長。

文=伊藤紀行 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc.  編集=露原直人

起業家日本経済
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