起業家は、リスクだけ取ろうとしてはダメ
──千本さんが考える、起業家にとって重要な素養をお教えください。
まずは「Sensitivity(感度)」が高いこと。鳥瞰(ちょうかん)をもって時代の大きな流れを見ることです。
今の時代でいうとAIが大きなトレンドになっているけれど、それが世界にとってどういう潮流をもたらしているのか。いま起きている事象に感度を高く持ち、それを大きな流れの中で捉えて観察することが重要です。
2つめは、「高い志」。
大きな潮流の中での矛盾や機会を見つけた時に、世のため社会のために「自分がやってやろう。戦おう」という心です。機会を見つけたときに、動き出せるかどうかは自分の中にしっかり芯、志を持っているかどうかにかかっているのです。
3つめは、「周到に準備すること」。
なんでもいいからとりあえずやればいいというわけではなく、人の3倍努力して、とことん準備をする。その上で最後にリスクをとることが大切です。
起業家にはすぐにリスクだけをとろうとする人が多いですが、それはダメ。ある意味で、起業家は「怖がり」でいいのです。怖がりで怖がりで、ものすごく準備をして、最後はリスクをとってジャンプをする。
そのような「慎重さと勇敢さ」という、二律背反の素養を兼ね備えている必要があるということです。
起業家といえば勇敢な人ばかりなイメージがあるかもしれないけれど、私の経験上、成功する確率が高いベンチャー起業家というのは怖がりで慎重、かつ最後はリスクをとれる人が多いですね。
──どうしたらその二律背反した素養を身につけられるのでしょうか?
小さな失敗を繰り返していていくことでしょう。これには4つめの素養として「Perseverance(継続的な忍耐心)」が必要です。
すぐ熱くなるが、すぐに冷めてしまうような人は起業家として大成しない。失敗しても、とことん食らいついて、しつこく継続できる忍耐心を持っていることが大切です。