高級時計ブランドの多くは、ノブレス・オブリージュの精神が行き届いており、環境保護活動にも積極的にかかわっている。
イタリア海軍特殊潜水部隊のミッションウォッチをつくっていた「パネライ」は、そのルーツである海と、その環境保全のためにEcologico(エコロジコ)プロジェクトをスタートさせた。リサイクル素材から生まれたステンレススティールを「eスティール」と命名し、これを高級時計のケースとして使用するというユニークな試みだ。
リュウズプロテクターにも、さりげなくeSteelの文字が。
「そもそもパネライは、パイオニア精神にあふれたブランドです。優れた潜水性能や海中でも明るく光る夜光塗料、ボリューム感のあるケースといった斬新なスタイルをつくり上げてきただけでなく、近年はBMG-TECH(バルク金属ガラス)という特殊素材を採用するなど、常にチャレンジする精神とDNAをもっているのです」とパネライのCEOジャンマルク・ポントルエは語る。
幼少期からマリンスポーツに親しみ、現在はパネライが所有するクラシックヨットのアイリーン号で地中海でのクルーズを楽しむ彼は、パネライと海とのかかわりをさらに深化させるべきだと考える。
Jean-Marc Pontroué パネライCEO
「eスティールは、従来の時計ケースに使用されてきたステンレススティールと物理的構造や耐食性に変わりはありません。では目的は何か? 我々が大切にしているのは、新しいエコシステムを構築することです。このプロジェクトはパネライだけのものではなく、オ-プンソースとして技術やプロセスを幅広く開示しています。というのも、時計に使用する材料の量は極めて少ない。ですからパネライだけではなく、ほかの時計ブランドでも使えるようにする。そうすることで、時計業界におけるリサイクルの考え方が、大きく変化してくれることを目指しています」
1936年に製造され、パネライが修復し所有するクラシックヨット「アイリーン号」。伝統を尊び、海を愛するパネライの象徴だ。
プラスティック汚染など、海の環境は急速に悪化している。