続く半導体チップ不足、問われる各国政府と企業の対応

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ジーナ・レモンド米商務長官は先週、米国の半導体製造業に対する520億ドル(約5兆7000億円)規模の投資計画を発表した。民間投資の促進と、国内7〜10カ所の製造工場建設につながるとしている。

世界規模で続く半導体チップの供給不足は、家電製品や自動車の製造など、幅広い分野に混乱をもたらしており、半導体チップは各国の競争力を示すリソースとしての存在感を増している。

昨年7月、7nmプロセスCPUの製造計画の遅れを明らかにした米インテルの大きな失敗を受け、アップルが自社製CPUの採用を決めるなど、米国の立ち位置は大幅に悪化。1990年当時、米国は世界のマイクロプロセッサー市場の37%を占めていたが、シェアは今では12%にまで落ち込み、米国の製造業の脆弱(ぜいじゃく)性を露呈している。

一方で勝者となっているのは、TSMCとサムスン電子などの半導体メーカーを抱える台湾と韓国だ。また、トランプ政権による制裁を受けて国内製造に力を入れ始めた中国は、国内の半導体製造業に対する大規模投資を決めた。

中国は数十年にわたり国内産業への助成金を続けてきたものの、TSMC創業者のモリス・チャンは、中国は台湾に今も5年の後れをとっているとみている。しかし一方で台湾は、一部の中国企業のデジタルインフラ締め出しや厳しい規制といった保護措置を講じている。

ただ、半導体産業は常に変化と順応を続けている。アップルは一部の自社製品に5nmプロセスのチップを採用し始め、TSMCは3nmチップの大量生産を目指している。またIBMは、初の2nmチップを開発したと明らかにした。

チップ戦略を明確に打ち出せるかどうかが、企業の競争への本気度を測る指標となっている。アップルに続いてマイクロソフトが間もなく「脱インテル」を図る可能性も浮上し、チップや半導体が現在の経済において中心的な役割を担っていることを浮き彫りにしている。

これは企業のみならず、国も同様だ。国内産業向けチップの研究開発や供給に関する戦略や優先度を明確に示せない国は、他国からの供給に頼り、相手のルールや優先順位を受け入れざるを得なくなってしまう。

編集=遠藤宗生

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