──このコロナ禍で、旭酒造の業績への影響は
昨年でいうと、5月が一番ひどい状況でした。国内も海外も売上は前年比で4割を切ってしまい、全てあわせても、45-6%くらいになってしまった。
ただ、今は海外が好調なので全体的な様子は堅調、前年も超え、製造もフルでやっても追いつかないくらいの状況です。
そんな中で、見えてきたこともあります。たとえば海外で言えば、日本に来れない代わりに日本酒を飲もうというお客様が、獺祭を試してみてくれ、お客様のパイは確実に増えた。しかし、それは一過性のことかもしれないので、もう少し丁寧にお客様たちをケアしていく必要があるということ。
また、国内では、どれだけ私たちが飲食店さんに頼っていたかという構造が見えてきました。勿論、大事なパートナーさんということで、彼らを応援する原動力にもなっているのですが、「家飲み」という市場に日本酒、特に地酒が適応できていなかったと分析しています。
たとえば、スピリッツなどは売上を見てみると、前年を超えているんですよね。ワインも前年から少し落ちたとはいえ、93-94%くらい。日本酒は90%に届かず、89%くらい。つまり、これまで私たち日本酒業界は「家飲み」という慣行をつくってこれなかったのだと気づいたんです。ここに気づけたことは大変よかった。これから家飲みのイメージをどのように作っていくのかが課題でもあり、楽しみでもあります。
──ウィズコロナ時代の展望は
このコロナを経て、国内と海外のバランスが大きく変わりました。今年は海外の方が上回るはずです。そうなると、今度は国内市場の位置づけがより重要になっていきます。世界中から注目されるショーケースになるからです。
国内市場で獺祭がどう見えているのか、どんなイメージなのか、お客様に対する見え方をきちんと丁寧に作っていくことが大事です。それは、私たちだけの力では出来ません。酒屋さんや飲食店さんとともに作っていく。それを考えるいいきっかけを頂いたと思っています。
海外に関しても、急激に伸びてしまったので、品質管理、コミュニケーション、流通管理などの面で、結果的に乱暴に売ってしまう形に市場が陥ってしまう。短期的な利益を求めるプレーヤーが入ってくることに気づかせていただき、これも対策を進めています。
また、SNSやオンラインイベント、Youtubeなどを通じて、思いを伝えていこうということに気づけたことも大きかった。今まで、酒屋、飲食店を通じて行っていたお客様へのアプローチを、もっと多角的に拡充したい、できると思うようになりました。
そんな関係者の皆様、そして、お客様と一緒に試行錯誤しながら、楽しんで新たなマーケットを作っていけるのではないでしょうか。
──最後に皆さんにメッセージを
新型コロナウイルスの感染拡大によって、「非日常」がいかに大事なものなのかに皆さん気づかれたと思います。
この経験を通じ、「お酒を飲む時間」は特別なんだ、非日常なんだ、ということに気づきました。また、私たち提供者の視点からみて、「一回飲みに行く」という行為がいかに貴重で大切なことかがわかりました。コロナ禍は私たちに新しい価値観というものをもたらしてくれました。
今回の意見広告を通じて、私たちが届けたかったのは「皆で考えるきっかけ」です。自分だけでは何もいいアイデアは出てこない。だから、皆で協力し合いながら、一緒に知恵を出し合っていく。こんな大変な時期だからこそ、皆とともになら立ち向かっていけると思うんです。