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2021.06.02 11:30

学び方には「コツ」がある。数学嫌いを工学部教授に変えた学習法


──勉強には「集中モード」と「拡散モード」の2つのモードが重要だとも指摘しています。

集中モードは、脳内の特定の神経細胞のつながりを活性化させています。物理的に近接した部分のつながりです。しかし、拡散モードは、脳内の広範囲に散らばった箇所をつなげるのです。私たちが散歩したり、シャワーを浴びたり、夜寝ている時などに起きるのが拡散モードです。例えるならば、大きな網目の漁網を脳に張りめぐらせるようなものです。離れた場所でも簡単につながりを持てる。

反対に、集中モードは、とても細かい網目の漁網です。脳内の本当に小さなスペースでの中で、密接したつながりを強めています。何かにすごく集中しているときは、脳内のそのスペースしか使っていません。しかし、もしかしたら、もっと別の場所にある箇所が、その問題を解くのに必要かもしれません。小さな網目では遠すぎるかもしれませんが、拡散モードのもっと大きい網目なら、遠く離れたところに簡単にアクセスできるようになります。

そうすると、そもそも何を解こうとしていたのかとか、何が問題なのか、という全体像が見えやすくなります。だから、集中モードから拡散モード、そこからまた別の場所で集中モードに、というふうに、この2つのモードを行って戻ってすることがとても重要なのです。

日本に講演に行くと、日本人の集中力に驚かされます。欧米ならリラックスしているときも、日本人はずっと本気で集中していて質問も多い。

でも、常に集中しすぎていると、拡散モードを抑圧し、結果として創造性を殺してしまうことに注意しなければなりません。ちょっとした短い時間の休憩でリラックスすることで、拡散モードに入り、集中モードでは気づかなかった新しいつながりや創造性を生み出すことができるのです。

──近年、学習法が注目されています。なぜこの激変の時代に学習法が重要なのでしょうか。

現代人は常にたくさんのことを学び続けないといけない状態にいるので、学びのツールに貪欲です。効率的な学習テクニックを身につければ、本の同じページを理解しようと何時間も見つめ続けるような無駄なことをしないで、必要な資料をもっと早く理解することができるでしょう。

さらに、知識を詰め込むだけでなく、自分が学んだことの構造や全体像を知ることで、新しい学びを付け加えることができるようになります。学びのツールを得ることで、もっと効果的で意味のある学びを深めることができるのです。


Barbara Oakley◎オークランド大学工学部教授。ワシントン大学スラブ諸語・文学部卒業、米軍に入隊。9年後に同大電気工学部を卒業。専門はSTEM教育、学習、病的利他主義など。学習法についてのオンライン講座は世界最大規模の聴講者数を誇る。

編集=成相通子 イラストレーション=山崎正夫

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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