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2021.06.06

「培養肉」をペットフードに、米スタートアップの試み

Sally Anscombe/Getty Images

ミートレス・マンデー(地球環境や健康のために、毎週月曜日を「肉を食べない日」とする運動)のメニューに豆腐以外の選択肢を求める消費者たちの後押しを受け、培養肉産業が成長を続けている。培養肉とは、動物から採取した細胞からつくられる人工肉のことだ。

世界の培養肉市場は、2025年までに2億660万ドル相当にまで拡大するとの予想もある。そして今、世帯トータルで見た環境フットプリントを削減するための試みとして、ペット向け培養肉製品の製造に乗り出す企業が登場している。

意外に大きなペットフードの環境負荷


米国のペットフードは、動物由来の材料が大きな割合を占めているものがほとんどだ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の調査によると、全米では総計1億6300万匹の犬と猫が、餌として肉を食べており、こうしたペットの食事によって生じる二酸化炭素の排出量は6400万トンにのぼる。これは、1300万台の自動車を運転するのに匹敵する量だ。

飼っているペットに代替肉を与えたいと消費者が考える理由は、温室効果ガス排出や、環境への影響に関する懸念ばかりではない。食肉の生産には、植物栽培と比較して、水やエネルギー、土地などが余計に必要で、廃棄物も多い。加えて、動物福祉や虐待をめぐる懸念もある。

新型コロナウイルスのパンデミックも、輸出入の問題を含め、さまざまな形で食肉産業に影響を与えている。コロナ禍の最中には、店舗が需要に対応できなくなり、飼い主である消費者はペットフードの品不足に直面した。

「より良いペットフード」を目指す新興企業の取り組み


サステナブルな生活様式として、ヴィーガン、あるいは菜食主義を選択する家庭が増えており、こうした人々は飼っているペットにも同様の食事を与えたいと考えるようになっている。しかし、犬はデンプン質の炭水化物でも生きていけるものの、猫は生来の肉食動物だ。肉に含まれるタンパク質を必要としており、こうした成分を取らなければ健康に問題が生じるのだ。この点が、「より良いペットフード」を提供したいと考える企業にとってはネックになっていた。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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