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TuneCore Japan代表 野田威一郎さん(撮影=林直幸)

今、音楽業界は大きな変貌を遂げつつある。

コロナ禍であらゆるエンターテイメント業が打撃を受ける中、配信音楽市場はその規模を着実に伸ばしている。日本レコード協会の発表によると、国内の2020年音楽配信売上の合計は783億円(前年比111%)。特にストリーミング配信は急速な拡大を続けている。

配信から誕生したヒット歌手の存在も記憶に新しい。2019年にリリースされた瑛人の「香水」はSNSを中心に人気を博し、2020年上半期には各種チャートを席巻した。

音楽事務所やレーベルに所属していないと楽曲を出せない時代から、アーティスト自らが楽曲を世界に配信できる時代へ──。これを可能にしたのが、アメリカ発のディストリビューション(音楽配信仲介)サービス「TuneCore」だ。

「日本のアーティストには世界を向いてほしい。そのためにも、アーティストがフェアに戦える土壌を提供したい」。TuneCore Japanの代表を務める野田威一郎はそう語る。

野田は、米国TuneCoreと自ら代表を務めるWanoとのジョイント・ベンチャーとして、2012年にTuneCore Japanを創業。日本でのサービスを開始した。わずかな手数料で配信の事務手続きを代行し、楽曲の原盤権譲渡は不要、配信の収益100%還元というこれまでにないアーティストファーストのサービスを展開。2020年度の収益還元額は71億円を突破した。

さらにこの3月には、中国の音楽配信市場に一早く参入。中国大手配信サービスTencentとNetEaseへの楽曲提供をスタートさせた。

CDから配信へという大きな変わり目を経て、これから音楽業界はどのように進化してくのか。TuneCore Japanが考える音楽の未来について、野田に語ってもらった。


──配信から生まれた瑛人さんの大ヒットなど、最近の音楽業界の変化を野田さんはどのように見ていますか?

最近、瑛人さんのようなインディペンデントなアーティストが、次々とヒットチャートの上位に入ってきています。これは音楽業界が「動いた」ことを示す、象徴的な出来事なのではないかと思います。

CD売り上げがピークだったのは1999年ころ。それから現在までの約20年間は、オリコンランキングの上位は一部のアーティストの楽曲でほとんど固定化されていました。ヒットするジャンルや担い手が凝り固まっていたんです。

健全な産業の場合には、常に新しい風が入ってきて、イノベーションが起きて、また新しい動きが生まれていくはずなのに、長い間ほとんど入れ替わりが起こらなかった。インディペンデントや新人のアーティストが世に出にくい状態が長い間続いていました。

それがここにきて大きく動いている。TuneCore Japanを設立してから8年以上が経過した今、配信という仕組みが普及し、定着し、みんなの「当たり前」になったんだなと改めて感じています。

──日本において、CD主体から楽曲配信にシフトするまでには、どんな段階があったのでしょうか?

やはり一夜にして変化したというわけではなく、徐々にCDから配信へと段階的にシフトしていきました。

日本国内でiPhoneなどのスマートフォンが登場したのが2010年頃。当時は楽曲のダウンロードサービスや着メロ配信をするサービスはいくつかありましたが、CDが強かったのでなかなか移行が進みませんでした。

構成=島田早紀、松崎美和子 写真=林直幸(メイン)

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