「神戸に稼げるアリーナを」民設プロジェクトの可能性と責任

体育館からの脱却━━。

エンターテイメント複合施設の建設こそ日本のアリーナスポーツにとっては次のステップへ行くために必要とされていた。その第一歩とも言える「沖縄アリーナ」で初となるBリーグ公式戦が4月21日に開催された。

そして日本でのアリーナ建設はここでは終わらない。世界最高峰のバスケットボールリーグNBAでも2016-2019年に4年連続で新アリーナが誕生。このペースに負けず劣らずのアリーナ建設ラッシュが日本でも見られることとなる。

アリーナ建設の形は主に二通り存在する。1つは税金が活用される公設のアリーナ。ここに当てはまるのが今年の沖縄、2024年に国体を招致している佐賀に誕生予定のSAGAアリーナ、2023年の太田アリーナ、2025年の愛知アリーナ、そして2027年秋に開業が予定されている大阪・万博記念公園アリーナだ。一方では民間企業が主体となって作り出すのが民設アリーナ。2024年の神戸アリーナ(西宮ストークス)、長崎アリーナ(長崎ヴェルカ)などがその部類に含まれる。


*これらの竣工予定は報道によるもので、事業者が発表しているものでないものも含まれる


この中でいま注目したいのは神戸アリーナだ。民設でも親会社が中心に建設する形ではなく、複数の民間企業がコンソーシアムを作ってアリーナ建設を目指す稀な仕組みとも言える。観客動員数ではリーグ平均以下に位置するB2西宮ストークスが日本を代表するアリーナを完成させることが出来れば、多くに勇気を与えるプロジェクトとなる。

その神戸アリーナのオーナーを務めるスマートバリュー取締役代表執行役社長の渋谷順氏が5月25日に開催された「スポーツビジネスアカデミー(SBA) THE BASE」に登壇し、“夢のアリーナ建設” にパートナー企業とともに漕ぎ着けた経緯や思い、今後の街づくりの構想について語った。


スマートバリュー代表取締役社長の渋谷順氏(右上はオンラインイベントのホストを務めたSBA理事でトランスインサイト代表の鈴木友也氏

スポーツの可能性をワークさせるためのプラットフォーム作り


3、4年前からスタートした西宮ストークスのアリーナ構想。そのきっかけには渋谷氏の思いがあった。

10年目を迎える西宮ストークスに関わり始めたのが2015年。Bリーグ創設前年から小さな枠での1つのスポンサー企業という始まりだった。球団の厳しい経営状況、関西で野球以外のスポーツが根付かない文化の中、ストークスのオーナーを個人として引き受けることとなった。

「私はある意味Bリーグに賭けているところがあります。Bリーグの将来構想、そしてスポーツ庁が掲げているスポーツ産業のスケールにもつながる、こういう事業のモデルが成立していかなければ、スポーツの世界観がもっと良くならないなと。必須だと最初から思っていました。」
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文=新川諒 編集=宇藤智子

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