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2021.06.02

東証マザーズ初上場は通過点。台湾スタートアップの隆々発展

2019年、台湾のBusiness Angel Investment Programが支援してきたAIスタートアップのAppierと電動バイク最大手のGogoroが、初のユニコーン・スタートアップとなった。両社の勢いは留まるところを知らず、 2021年3月にはAppierの持株会社Appier Groupが東証マザーズへ上場を果たした。

そこで、目覚ましい成長を続ける台湾スタートアップエコシステムの現状について、EveriiiONEのマネージング・ディレクターを務めるLeroy Yau氏、Startup Island Taiwanのディレクターを務めるAllen John Ku氏、東京大学大学院で博士号取得中でありBE Health Ventures & Acceleratorのプロジェクトリーダーを務めるWang Yen Po(Peter)氏に伺った。

台湾のスタートアップエコシステムについて


政府は、資金(国家開発基金は、エンジェル投資プロジェクトに7000万米ドル、産業革新・変革基金に35億米ドルを割り当てた)、規制(スタートアップやエンジェル投資ファンドへの投資を促進するための様々な税制上の優遇措置)、人材(起業家ビザなど、より多くの外国人人材を台湾に呼び込むための新しい法律を施行)などの分野でスタートアップ支援を行ってきた。

2015年に設立されたTaiwan Startup Stadium(TSS)にも台湾の国家発展委員会が出資をしており「台湾のスタートアップエコシステムを構築し、台湾のスタートアップを世界に橋渡しすること」を使命とし、海外アクセラレーターやテックカンパニーと現在加盟している180社以上の台湾のスタートアップを繋げている。さらに、国家発展委員会は、2019年に台湾のスタートアップを世界に広めるために、スタートアップブランド「Startup Island Taiwan」を展開した。台湾の人口は約2200万人なので、スタートアップの成功にはグローバル化が必須なのだ。

投資状況を見ると、2015年から2018年にかけて、台湾のスタートアップ投資案件の年間成長率は8.72%で、これは世界平均とほぼ同じ。また、2015年から2020年の間に、総額44億米ドルを超える1589件のアーリーステージへの投資案件があり、そのうち1164件は2010年以降に設立されたスタートアップへ投資されている。

参考:2019 Taiwan Startup Ecosystem Survey /2020 Taiwan Startup Investment Scene Report


台湾のトップスタートアップ産業について


台湾のベンチャーキャピタルからの資金調達額が多い産業はヘルスケア・医療産業で、2015年以降、バイオテクノロジー、医薬品、医療機器に投資された案件は239件、総額8億2800万米ドルにのぼる。他には、IC設計や通信部品などの電子部品を製造するスタートアップも投資家の関心を集めており、2015年以降、118件、総額2億9500万米ドルの投資が行われた。また、AIインテグレーションサービス、クラウドサービス、データ分析など、ソフトウェア/ハードウェアのB2Bサービスを提供するスタートアップも、かなりの額のVC資金を集めており、2015年以降、最大99件、総額2億8100万米ドルに達した。

スケーラビリティの観点から見ると、グリーンエネルギーとIoT関連のスタートアップ企業の規模が拡大。グリーンエネルギー関連のスタートアップは、2020年の投資案件でトップ3に入っており、電池によるエネルギー貯蔵と太陽光発電が主な焦点となっている。IoTスタートアップも投資案件と投資額がともに増加しており、屋内測位システム、監視システム、エネルギー管理システム、産業用アプリケーション、ロボットなどに関心が寄せられている。

以下は、2015年から2020年までの投資案件成立数と資金調達額の合計で上位のスタートアップ産業を示したもの。

投資案件成立数と資金調達の上位業種
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文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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