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新シューズの開発を担当したアシックスの竹村周平

“ナイキの1強”。

昨今、ランニング界隈でよく聞こえる言葉だ。エリートレースにおいて、厚底シューズを採用したナイキのシューズを履いた選手が増えたことを表している。

また、2018年以降、4度更新された日本記録は、いずれもナイキのものだった。その影響は未来を担う選手が集う箱根駅伝でも確認でき、2021年参加の全210選手のうち、ナイキ使用率は95.7%に。実に201人がナイキを選択したのだ。アシックスは、使用者0人。

しかし、この流れを変えるべくシューズとして、日本の技術力を搭載した新作「メタスピードシリーズ」が登場。厚底ソールにカーボンプレートが内蔵された新シューズだ。札幌マラソンフェスティバル・ハーフマラソン男子で、自己新記録(1時間0分46秒)で優勝したヒラリー・キプコエチ選手(ケニア)はじめ、複数の上位選手が着用していた。

勢力地図を変えるべくナイキに挑むアシックス。劣勢だった国内メーカーは、何を見ていたのか。開発担当・竹村周平氏に聞いた。

選手のタイプに合わせた2つのシューズ開発


「勝ち方は、ひとつだけか」。これはアシックスが今回掲げたスローガンだ。ランニングには、ストライド走法・ピッチ走法と2つの走法があるが、それに対応した2シューズを開発したのが、今回の「メタスピードシリーズ」だ。

歩幅に着目したストライド走法向きの「メタスピードスカイ(以下:スカイ)」と、脚の回転数に着目したピッチ走法向きの「メタスピードエッジ(以下:エッジ)」がある。軽量フォーム材の中で最も優れた反発性を発揮する「FF BLAST TURBO」を、どちらのミッドソール全面に採用。これを厚めに設定し、かかと部から前部にかけて5mmの傾斜差をつけることで、反発性をできる限り高めたのが「スカイ」。ストライドが伸びやすい構造になっている。

一方で、「スカイ」より「FF BLAST TURBO」を抑え、かかと部から前部にかけて8mmの傾斜差をつけることで反発性を高めたのが「エッジ」。ピッチをコントロールしやすいシューズと言える。

メタスピードを手にもつ

選手がトップスピードで走ろうとすると、ストライド(歩幅)とピッチ(足の回転数)が影響を与えるようになる。今回のシューズ制作において、アシックスが選手と向き合っていく中で、「ストライドが変化する選手、そして、ピッチとストライドが変化する選手」がいることが判明した。トップ選手といえども個性は様々だ。そういった個性に合わせて作ろうと始まったのが、今回のシリーズである。

「今回のプロジェクトが始まって、改めてアスリートと正面から向き合うことを意識していました。これまで以上に選手と面談し、彼らの数値データを取り寄せて分析したんです。オンラインでの面談を複数回行ったのですが、ダイレクトに伝わるものがありました。シューズに対する細かなオーダーや感情は、メールだとわかりません。

一方で、メールで怒っているように見える場合でも、実際にはそうではなく、新たな課題発見に繋がることもありました。1つのシューズ開発でこれほど多くの選手と向き合うケースは稀。どれだけネガティブな情報をキャッチできるか、それが肝でした」(竹村氏)

文=上沼祐樹

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