奇しくも、というか何かの必然なのか、今年はライブ映画の10年に一度あるかどうかの当たり年。10本中4本が2021年に日本で劇場公開(予定も含む)される作品になってしまった。でも嘘ではなく、どれもお勧めなので是非チェックを!
1. セレブな避暑地が舞台 『真夏の夜のジャズ』
1958年に米東海岸のニューポートで開催された「第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバル」を記録したドキュメンタリー映画。大御所のルイ・アームストロングをはじめ、モダンジャズのセロニアス・モンク、ラウンジーなジョージ・シアリング、ヴォーカリストのアニータ・オデイなど、当時すでに多様化していたジャズを味わえる(ついでにロックンロールの王様チャック・ベリーも登場)。
そんな音楽と同じくらい魅力的なのが、観客たちの古き良きリゾート・ファッション。監督のバート・スターンがファッション写真家のためモデルらしき美女もちらほら。アメリカーナなジミー・ジェフリーで幕を開け、マヘリア・ジャクソンのゴスペルでしっとりと幕を閉じる構成も素晴らしい。
2. やはり圧巻のエルヴィス 『68カムバック・スペシャル』
エルヴィス・プレスリーが、7年ぶりに公の場で行ったライブ・パフォーマンスを収録したテレビ特番。かつては過激な若者として危険視されていたエルヴィスだったが、サイケとヒッピー全盛期だった当時はオワコン扱いだった。客席も「有名な人みたいだから見に来ました」的なビートルズ世代の若い観客が目立つ。結構なアウェイ状態である。
しかし、そんな逆境においても流石はエルヴィス。巧みな歌唱力と高止まりしたテンションで客席を引き込み、『監獄ロック』と『冷たくしないで』の2連発で大爆発。「キング・オブ・ロックンロール」の称号は伊達じゃない。一方、旧友のスコティ・ムーアやDJフォンタナとのリラックスしたセッションは「アンプラグド」の元祖の趣も。
3. 時代を象徴する観客たちのファッション 『ウッドストック/愛と平和と音楽の三日間』
1969年8月にニューヨーク州郊外の農場で三昼夜にわたって開催され、40万人以上の観客を動員したとされる「元祖フェス」、ウッドストック・フェスティバルの全貌を捉えたドキュメンタリー映画。
ザ・フーやジミ・ヘンドリックス、CSNといったスーパースターから、ここでの演奏をきっかけにブレイクしたサンタナまで、出演者のパフォーマンスはどれも最高だけど、同じくらい印象に残るのは観客たちのサイケでフラワーなファッション。この時代を舞台にした映画の衣装デザイナーは大抵、本作をリファレンスにしているという話にも納得だ。