「コロナの武漢起源説」が再燃、著名科学者らが調査呼びかけ

中国科学院武漢ウイルス研究所(Feature China/Barcroft Media via Getty Images)

米国のバイデン大統領は5月26日、新型コロナウイルスの発生源に関し、武漢の研究所から流出した説も含めて徹底した追加調査を行うよう情報機関に命令した。

ウイルスが武漢のラボで作られたという説がにわかに有力視される中、共和党のトム・コットン上院議員やトランプ前大統領らは、主要メディアがこの説を早い段階で否定し、厳密な調査を怠ったことを批判している。

コットン議員はツイッターで、ラボからの漏洩説を「陰謀論」と決めつけたメディアや医療関係者を非難し、トランプは声明で自らの見方が「正しかった」と主張した。

コットン議員は昨年1月30日の上院軍事委員会の公聴会で「武漢には中国唯一のバイオセーフティーレベル4の研究施設があり、世界で最も危険な病原体を使った研究が行われている。病原体の中にはコロナウイルスも含まれている」と述べ、中国の責任を示唆していた。

その後、多くの報道機関は、武漢のラボからのウイルスの漏洩説を「中国による生物兵器」関連の「陰謀論」として報じたが、コットンは、何らかの手違いでウイルスが漏れた可能性もあると主張した。

その後、ワシントン・ポストなどの主要メディアが、彼の主張に関する事実確認記事を掲載し、コットン議員は「生物兵器説は多くの仮説のひとつに過ぎない」と述べた。しかし、「陰謀論」というレッテルは、その後数カ月にわたってこの仮説を否定する根拠として残り続けた。

コットン議員は2020年2月16日のツイートで、ウイルスの起源について4つの説明を行った。その骨子は次の通りだった。「1. 自然発生(最も可能性が高いが、武漢の食品市場からではないことはほぼ間違いない)、2. 良い科学と悪い安全性(ワクチンなどの研究をしていたが、偶発的な違反が起こった)、3. 悪い科学と悪い安全性(生物兵器の開発中に偶発的な事故が起こった)、4. 意図的な放出(可能性は非常に低いが、確証が得られるまではこの仮説を除外すべきではない)」

ほとんどの科学者は、コロナウイルスの起源は、野生動物から人間への感染だと考えている。しかし、18人の著名な科学者グループが5月14日、実験室での事故説に「一定の信憑性がある」とする書簡を「サイエンス」誌に掲載し、さらなる調査を呼びかけた。また、ニコラス・ウェイド(Nicholas Wade)を含む著名な科学ジャーナリストらが、この説に注目するよう求める記事を発表したことから、ラボからの漏洩説がここ数週間で注目を集めている。
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編集=上田裕資

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