ウッドショック禍、日本の林業が「国産材増産」に踏み切れない理由

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7割が森林、それでも国産材増産の余裕なし


そこで、「今こそ国産材を」という声が高まっている。日本は7割が森林に覆われていて木材は豊富にあるはずだ。国産材の需要が増え高値が付けば、林業は活性化し、山村経済も立ち直るきっかけになるのではないか。そう期待する声も出ている。

だが、日本の林業界の動きは鈍い。というのも簡単には増産できないからだ。

森林
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まず知ってほしいのは、林業界では、森林所有者と木材生産業者はたいてい別であること。作業を行うのは森林組合や民間の林業事業体で、所有者と契約して伐採・搬出を行う。年単位で計画を立て、伐採地と面積に合わせて人員や機材を確保するのである。しかし長引く低迷で人手不足も続いており、途中から増産に転じる余裕はない。

さらに補助金の問題もある。林業では植林から下草刈り、伐採搬出まで、作業のほとんどに国や自治体から補助金が支出される。その額は各作業経費の約7割に上る。しかし補助金の支出額は年間で決められるため、急な増額は無理だ。

これまで木材価格が下がっても、補助金目当てに木を伐ると批判されてきたが、今回は価格が上がって補助金がないと増産しないわけである。日本の林業は、市場原理よりも補助金の額で動いている。

業者の不安、「3カ月後も高騰が続く確証ない」


現在作業中の山に関しては、業者は、ウッドショック前に森林所有者と従来の価格で契約した。そのため、木材価格の急騰で業者は大儲けしている。しかし、その儲けが所有者には還元されないため、業者が次の伐採地を確保しようとすれば、今度は所有者から値上げを要求されるだろう。

とはいえ今から伐採しても、山から木材が出るまでに約3カ月はかかる。それまで木材の高騰が続いているという確証がない……と業者は戦々恐々で値上げを渋りがちだ。

実際、各地の林業地を聞き取りした木材商社によると、現場の増産意欲は弱いという。そもそもウッドショックを知らないケースもあるらしい。森林所有者、伐採業者、製材業者、合板業者、そして建築業者などの間に情報が流れていないのである。

自分の山の木材がどこで何に使われているかを知らず、建築業者は、建てている住宅に使う木材の産地もわからない。だから増産の提案を受けても、誰が儲けるのか、誰がリスクを負うのかと疑心暗鬼にかられて、なかなか連携して動かない。
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文=田中淳夫 編集=露原直人

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