バンクマン=フリードは、近年注目を集める「効果的な利他主義(Effective Altruism)」と呼ばれる哲学を信奉している。5月26日、フォーブスの「アンダー30サミット」で講演した彼は、人類の未来のためにできるだけ大きな寄付をする方法を考えた結果、暗号資産にたどり着き、世界最大級の取引所を設立したと説明した。
「結局のところ、私の目標は、どうすれば世界に最も大きなインパクトを与えることができるかを考えることなのだ」とバンクマン=フリードは語った。
「効果的な利他主義」は、2000年代後半にオックスフォード大学の哲学者であるトビー・オード教授によって広められ、2015年に生命倫理学者のピーター・シンガーが出版した著書「The Most Good You Can Do(あなたが世界のためにできるたったひとつのこと)」によって広く知られるようになった。
バンクマン=フリードは、2014年にマサチューセッツ工科大学で物理学の学位を取得する一方で、自分が信じる大義のために働くことを考えてきた。
その後、クオンツ投資大手のジェーン・ストリート・キャピタルでトレーダーとして活躍した彼は、誕生間もない暗号通貨の世界に魅了された。バンクマン=フリードは、伝統的な金融業界の「無意味な」証拠金制度や、顧客の資金を「無能なリスクエンジン」に貸し出すことに不満を感じていたが、暗号通貨の世界でリーダーとなることで、大金を稼ぐチャンスがあると考えた。
「数年前まで小さな業界だったこの分野は、突然、巨大な規模に成長し、通常であれば直面するようなプレッシャーとも無縁だった」と彼は話す。「暗号通貨は伝統的な金融業界を置き換えるポテンシャルを秘めているが、まだうまく構築されていないと考えた」
彼は、2017年にクオンツトレーディング会社のアラメダリサーチ(Alameda Research)を立ち上げ、現在は1億ドルのデジタル資産を運用している。また、同時に立ち上げた暗号通貨取引所のFTXは1日あたり50億ドルの取引を行い、イーサリアムよりも高速で安価なトランザクションを可能にするブロックチェーンのSolanaを生み出した。