宿泊・発電事業でスタートした100年企業、プリンスグランドリゾート軽井沢の壮大な次世代戦略とは?

軽井沢プリンスホテルウエスト「ALL DAY DINING LOUNGE/BAR Primrose」のテラスから庭園を望む。左はプリンスホテル常務執行役員徳永清久さん、右が筆者。

地域を行政単位でみるのではなく、周辺エリア全体を経済圏ととらえ、どのような仕掛けをすればエリア全体に多くの観光客が周遊し、経済が活性化するのだろうか。本稿では、最近移住者が急増している軽井沢エリア移住者に新しいライフスタイル、ワークスタイル、新しい価値観について書かせて頂く。同時に大軽井沢経済圏(本稿では、軽井沢を東京からのゲートウエイとした周辺自治体や北陸新幹線沿線を一つの経済圏ととらえ、「大軽井沢経済圏」と定義している)の企業・団体のトップや自治体の首長に、様々な角度から次世代戦略をインタビューしている。


コロナ禍により、ホテル業界は大きな試練を迎えた。各社ともニューノーマル時代への新しいホテルの在り方を模索している。

軽井沢プリンスホテルは、軽井沢駅の南側の軽井沢・プリンスショッピングプラザ(西武プロパティーズ運営)と隣接しており、ゴルフ場、スキー場、宿泊、レストラン、MICE、温泉などが有り日本を代表する総合リゾートホテルだ。

プリンスホテルは、今年軽井沢での事業開始100年目の節目を迎えた。この節目を迎えるにあたり、軽井沢プリンスホテルウエストに新たにMICE※1ロビー、新レストラン棟、ウエスト新客室棟と温泉棟と矢継ぎ早にオープン。どのような次世代戦略を持っているのだろうか?
※1 企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の事で、最近ホテル業界が力を入れている。


昨年オープンした軽井沢プリンスホテル ウエスト(レストラン棟・バンケット専用エントランス)

今回は、プリンスホテルで東北・新潟・長野・群馬をご担当されている常務執行役員の徳永清久氏にインタビューする。ザ・プリンスさくらタワー東京・グランドプリンスホテル高輪・新高輪の総支配人として手腕を発揮された徳永清久氏は、ホテル業界でまだMICEが浸透していない時代からMICEの将来の可能性を追求、まさに日本を代表するMICEの先駆者といっても過言ではない。

地域経済活性化のための地域連携の重要性


地域経済を盛り上げていくには、単独の市町村だけでは完結しない。地域資源を最大限活用し、経済的価値を高める為に地域全体が一体となって盛り上げていく事が重要だ。

軽井沢と周辺地域との関係は、完全に相互依存関係にあると言える。雇用の側面で見ると宿泊業・飲食業・販売業・不動産業・建築業・土木業など周辺地域から軽井沢へ働きに行く人は年間を通じて多い。朝夕の車の渋滞を見れば明らかだ。

経済的側面で見ると、軽井沢在住の人は大規模商業施設が集積している佐久市に買い物に行く人が多い。また千曲川ワインバレー一帯にはワイナリーだけではなくレストラン・温泉も多く、軽井沢から観光客、別荘所有者、移住者、地元の方々など最近訪れる人が急増している。

御代田町・小諸市の浅間サンライン沿いの眺望の良いエリアからは、御代田町・小諸市・佐久市・上田市内を一望、遠くにアルプスや八ヶ岳・蓼科山を望み、天気が良ければ富士山も望める絶景ポイントも有る。魅力的な観光コンテンツの多いこの地域全体を軽井沢をゲートウエイとして考えると、車で30~40分、しなの鉄道でも30分程度と近いエリアだ。

軽井沢プリンスホテルのある軽井沢は、東京から北陸新幹線で最短で62分と近い。2024年に現在金沢が終着の北陸新幹線が、福井まで延伸※2する。金沢から先の予定されている駅は、小松駅、加賀温泉駅、芦原温泉駅、福井駅、越前たけふ駅、敦賀駅の6駅だ。
※2 最終的には京都経由新大阪まで延伸が予定されている。

さらに2025年には、2820万人(主催者発表)もの来場者を見込んでいる大阪・関西万博も開催される。例えば東京から大阪・関西万博に行く場合、行きは東海道新幹線で、帰りは北陸新幹線経由でということも考えられる。その中継地点が軽井沢だ。ワーケーションの脈絡で考えると、帰りに軽井沢でリゾートテレワーク滞在することも十分考えられる。今後軽井沢は東京だけではなく、福井から大阪までの広域エリアが一気に商圏となるだろう。
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文=鈴木幹一

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