幻覚ドラッグでうつ病治療を目指す医薬品メーカー、Cybinの挑戦

anitram / Shutterstock.com

サイケデリック医薬品メーカーの「Cybin」は、マジックマッシュルームに含まれる幻覚成分シロシビンを用いた舌下錠を開発し、うつ病治療に活用することを目指している。同社は、今年後半に臨床試験のフェーズ2を開始する予定だ。

同社によると、ジャマイカにあるUniversity of the West Indies Hospitalの倫理委員会が先日、臨床試験の実施を承認したという。同社CEOのDoug Drysdaleは、臨床試験の承認が得られたことは大きな進展だとしている。

「精神病の治療に革新をもたらすチャンスだと考えている。1回の投与でうつ症状を数カ月間なくす治療薬は他に存在しない」とDrysdaleは話す。彼はCybinに参画するまで、30年間製薬業界で働いた経歴を持つ。臨床試験は、ジャマイカ保健省の最終承認を経て開始される見込みだ。

ここ最近、1960年代に盛んだった幻覚剤の研究が復活し、「サイケデリック・ルネッサンス」と呼ばれている。英国本拠でナスダックに上場する「Compass Pathways」は、シロシビンの結晶多形の特許を取得し、非営利団体「Usona」は、シロシビンを使った治療薬でFDA(米国食品医薬品局)からブレークスルー・セラピーの指定を受けた。

また、幻覚剤学際研究学会(Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies)は、フェーズ3臨床試験のデータを公表し、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療に有用であると発表した。それによると、3度の治療を受けた被験者のうち、67%がPTSDの診断基準を満たさない水準まで症状が改善し、88%については臨床上有意な改善効果が認められたという。

他にも、不安障害の治療にLSDを用いたり、オピオイド使用障害の治療薬としてイボガインを用いている「MindMed」がナスダックに上場した。

Cybinは、2020年に採掘会社との逆さ合併によりトロントのネオ(NEO)取引所に上場を果たした。同社は、うつ病の治療薬として、シロシビンを含んだ口の中で溶ける薬剤の販売を目指している。ただし、米国FDAから承認を得るのは容易ではない。
次ページ > アルコール依存症の治療も視野に

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事