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2021.06.01 08:00

ホーチミンの路地で出会った「ちょうどいい」ニッチ戦略


ニッチ戦略で重要となるのは、“ちょうどいい”ニッチさである。適度にニッチだが、ある程度のパイも期待できる。その絶妙なバランスを探ることがポイントとなる。

クラフトビールはレッドオーシャンだが


先述のヘムで出会った果実酒専門店は、そのバランスが素晴らしい。日本のデータにはなるが、国税庁酒のしおりによると、2017年の果実酒の課税数量は、38万2千キロリットル(国税局分、税関分の合計)。酒類全体が874万5千キロリットルなので、全体に占める割合は約4%となる。ビールは262万8千キロリットル(全体の約30%)もあり、メジャーすぎるといえよう。

尖ったコンセプトのクラフトビールを開発するという、ビールの中でのニッチ戦略は成立しうるが、それでも最近はクラフトビールブランドが乱立しており、レッドオーシャン気味である。一方、合成清酒は2万9千キロリットル、ブランデーは5千キロリットルなので、ニッチすぎる。「果実酒専門店」は実は理にかなった、“ちょうどいい”ポジショニングなのである。


ヘムでの偶然の出会いから食事をご馳走に=2018年10月

ホーチミン滞在最後の夜、友人から電話がかかってきた。「ヘム歩いていたらいきなり食事に誘われたんだけど、来ない?」。ちょうど夕食を食べていなかったので、宿からバイクタクシーで向かった。そこでは、地元住民の一家が料理をせっせと準備してくれていた。さすがに申し訳ないので、友人と2人で料理を手伝う。完成。庭先に常設のテーブルをみんなで囲む。料理の名前は分からなかったが、ホーチミンの気候とベトナムビールに合う、香草の効いたさっぱりした味わいだった。

ホーチミンには、南北統一前のハノイをイメージしたカフェなど、興味深いポジショニングのビジネスがいくつか見られる。居心地が良く、マーケティングの気づきをくれるホーチミン。自由に渡航できるようになったらまた訪れたいと、ひそかに計画している。その際はもちろん、ヘムも探検してみるつもりだ。新たな出会いを求めて。


ホーチミンで見つけたカフェ。この町はマーケティングの気づきをくれる場所だ=2018年10月


連載:世界を歩いて見つけたマーケティングのヒント
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文・写真=田中森士

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