日本伝統の「食の智慧」が世界のフードテック市場で果たせる役割

(Atlast Food Co.より)


ペットにも「麹」で健康に Wild Earthの試み


「Wild Earth」というスタートアップは、「麹菌」を使用したペットフードを開発している。共同創業者の一人であるロン・シゲタ氏は、フードバイオ領域の先端ベンチャーの育成を手掛けるIndie BioやBerkeley BioLabsの共同創業者でもあり、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のバイオヘルスケア系産学連携アクセラレータープログラムであるQB3とも絡むバイオ領域で20年以上もの実績を持つ。

同社はシゲタ氏と、サンフランシスコに拠点に置くバイオVCのBABEL VenturesやSustainable Food VenturesのパートナーであるRyan Bethencourt氏らが2017年にサンフランシスコで創業した、植物性由来のペットフード開発スタートアップだ。累計で総額1620万ドルを集めており、粛々と前進している。


写真提供:Wild Earth公式サイトより

彼らも前述のProper SakeやPrime Rootsと同様、「麹」をタンパク源に着目している。さらに麹が本来持つ健康訴求性に加え、「旨味成分」にも目を向けている。これらがペットにありがちなアレルギー反応を引き起こすことが少なく、質の高いものを生み出せるというのが彼らの見方のようだ。

Wild Earthの技術では、独自の酵母由来のタンパク源からドッグフードを完成させるまで、たった3日間しかかからないという。これは、従来のタンパク源からのプロセスよりもはるかに短い工程で、結果として環境面への負荷が大幅に改善されるということになる。まさにサステナビリティにも訴求する試みであり、かつ動物にも優しいということで、市場トレンドを見事に捉えていると言える。

現在は主に犬向けのドッグフードがメインだが、次は猫に主眼を置いたキャットフードにも着手し、近い将来「パーソナライズ化されたペットフード」を目指すとのこと。

こうしてペットにもプラントベースの潮流がみられるのは、ペットオーナーの意識の変化の表れでもあると言えるかもしれない。彼ら・彼女らはミレニアル層やGen Z層も少なくない。自分たちだけでなく、ペットが食べるものにも高い関心を示し始めているという構図だ。

特にペットフードを作るまでのプロセスで、実はかなり環境への負荷がかかるとされており、そうした地球持続性の観点からも人間のみならずペットの食にもプラントベースの流れができつつある。そこに日本の国菌と言われる「Koji」が役割を果たしている点は非常に興味深い。ペットフードのセグメントは今後、次に続けとばかりに事例が出てくるかもしれない。

文=熊谷伸栄

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