日本伝統の「食の智慧」が世界のフードテック市場で果たせる役割

(Atlast Food Co.より)


同社は元々日本の麹菌について調べた際、その働きに魅了されたことをきっかけに、麹菌や菌体由来の代替食品の開発メーカーに至ったという経緯がある。麹菌が本来持つ自然発酵による様々な機能性を自分たちで再現し、広げていきたいという強い思いを持っている。

いまや代替肉の代名詞ともなった「Beyond Meat」や「Impossible Foods」が、主に大豆プロテインの濃縮版やエンドウ豆やムング豆に由来する代替タンパク食品を開発しているのに対し、Prime Rootsは麹菌由来。日本に古くから根付く「麹」に海外の若き起業家が注目し、アメリカ人の大好物であるハンバーガーやベーコンに再定義しているのは、日本から見ると実に面白い。

彼ら以外にも似たようなフードテックスタートアップで菌糸体(mycelium)を活かした代替プロテインを開発する「Atlast Food Co.」や「Emergy Foods」がある。詳細を以下に挙げる。


(左:Atlast Foods社公式サイトより、右:Meati Foods公式サイトより)

Atlast Food Co.

設立:2020年(バイオマテリアル開発メーカーEvocative Desigよりスピンアウト。創業者は同一)
本社:ニューヨーク州アルバニー市
概要/特長:菌糸体由来の代替タンパク源の開発、販売
累計投資額(公表ベース):4700万ドル

Emergy Foods(ブランド名:Meati Foods)

設立:2016年
本社:コロラド州
概要/特長:発酵させたマシュルームの茎等から採取された菌糸体由来の代替肉の開発販売。同社の原材料には大豆、エンドウ豆、小麦を未使用。2021年6月現在、同社の主力商品に「菌糸体由来のベーコン」等がある。
累計投資額(公表ベース):3110万ドル

米Good Food Institute及びPlant Based Foods Associationによれば、全米の植物性由来(Plant-Based)の食品の売上規模は2020年に70億ドル(約7600億円)にも達したと試算している。これは、主に従前の動物由来の製品に代わる商品群の前年比27%となる。

さらに、米国の家計のうち約57%が昨年何らかの植物性食品を購入している。コロナ禍が世界を襲う前の2019年と比べて53%増加している。これまでジャンクフードに偏りがちであった(と筆者は考える)アメリカ人の食の選択も改めて健康と食との向き合い方を大きく変える時期に差し掛かったのかもしれない。
次ページ > 環境にも優しいドックフード

文=熊谷伸栄

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事