日本伝統の「食の智慧」が世界のフードテック市場で果たせる役割

(Atlast Food Co.より)

米西海岸のサンフランシスコ/シリコンバレーや東海岸のニューヨークといったアジア系住民も多いような都市圏では、日本人や日本食を好む消費者が多く住むことから、現代日本食の代名詞であるラーメンや寿司、日本酒などのアルコール飲料がブームとなることが少なくない。

しかし、日本食の広がりはその領域にとどまらない。最近では、発酵やその他日本に伝承された食本来の力を用い、プラントベースで、現地の食文化に馴染む形で再定義しようとする動きが出始めている。ビールや代替肉、さらにはペットフードにまで、そのユニークな展開に注目したい。

“麹菌由来”ビールを開発


米南東部に位置するテネシー州のナッシュビルに、日本の清酒で使われる麹を活かしたビールを開発する会社がある。その名も「Proper Sake」。創業者は、かつて日本で生活したことのあるByron Stithem氏だ。

日本で酒造りに使われる麹やラガービールの魅力に惹かれ、それを地元のビールに活かせないかと考えたStithem氏は、Koji Goldという米版“麹菌由来”ビールを開発。現在、テネシー州をはじめ、にわかに話題となっている。

彼らの魅力は、日本の食品がアメリカにそのまま輸出されて現地の日本食スーパー等に売られる形ではなく、あくまで米国人の口に合った「アメリカ人の人気レシピ」に仕立て上げられている点だ。同社は、自社商品の重要な要素となる麹菌、酵母菌、米や水に「素材」としてのこだわりを持っており、例えば水に関しては、本来ならば日本のある地域でしか採取できない井戸水を模倣した水を自社開発している。


写真出所:Proper Sake社公式Squareサイトより

「代替ベーコン」にも麹を活用


米名門カリフォルニア大学バークレー校の学生2人が2017年に創業した「Prime Roots」は、麹菌(“Koji”“Filamentous Fungus”)を独自で開発し、肉や魚に「類似」する代替タンパク食品を開発している。

フードバイオ系のスタートアップアクセラレータープログラムとして著名なサンフランシスコのIndie Bio(SOSV)をはじめ、投資家から公表ベースで既に4500万ドルを集めており、2019年には彼らとして初めての商品である「代替ベーコン」を上市している。今年4月には、植物性ベーコンが4つの味が新たに発売された。

商品の発売に先駆け、消費者と対話をする形でアンケートを実施し、市場の声を拾い上げることを心がけていた点から、プロダクトマーケットフィットを着実に対応しているとも言える。


写真出典:Prime Roots公式Press Kitより
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文=熊谷伸栄

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