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社会的マイノリティの眼差し


泣き寝入りを強いられる被害者が増えると社会的コストがかさむ。これは本来パブリックヘルスの問題だ。アメリカ カリフォルニア州性犯罪防止連合(California Coalition against Sexual Assault (CALCASA) –2021年にAdvancing Equality. Ending Sexual Violence (VALOR)に改名)が2018年に発表した「カリフォルニアでの性暴力にかかるコストと影響(The Cost and Consequences of Sexual Assault in California)」によると、2012年に同州で性暴力被害に遭った人は約94万人と推定されている。その内66%が女性で、34%が男性の被害者だ。

これらの性暴力のせいで必要となった医療、福祉、警察、司法にかかった金額が2012年の1年間に約9ビリオン(9000億円)という。それに加え、表に出にくい経済ロス(失業手当や支援後にかかるメンタルケアの費用など)を含めると、1年間で約140ビリオン (1兆5000億円)もの社会的コストの損失が推定されるという。

さらに興味深いのは、1つの性暴力を防止することで年間16万3000ドル(約1700万円)もの社会的コストが削減でき、子どもひとりの性虐待を防止することで年間22万7700ドル(約2400万円)が削減できるという計算も出ていることだ。

日本よりはるかに高額なアメリカの医療費と生活コストが、そこまで高額な社会的コストにつながっているのも事実だ。だが、心身に大きな影響を与える暴力被害がもたらす代償は、目に見えにくいだけで、日本でも大きな損失を生んでいる。それを象徴するのが、ひきこもりや女性の貧困の問題だろう。

暴力を受けたことにより起こる統合失調症やうつなどの精神疾患を患う人が増え、それまで自活していた人も普通に暮らすことが困難になり、失業して生活保護を必要とするようになる。女性の貧困には、福祉でこぼれ落ちたDVや性暴力の被害者が要因のひとつであることも多い。

貧困に陥ると人が変わってしまう人もいる。そして弱者、特に女性やこどもへの虐待やネグレクトも増える傾向にあり、医療にかかる費用も増える。言うまでもなく、公費で賄われる医療費と福祉の額は膨らむばかりだ。最悪なのは、福祉に携わる人が担当するケースが増えれば増えるほど、救えるはずの命が救えなくなるということだ。

日本における非常に手薄な外国人市民への支援状況は、上記のような悪循環をわざわざ作り出しているようなものだ。

いかなる立場の犯罪被害者も守られるアメリカ


最近では実習生として来る外国人労働者に対する人権侵害が目に見えて深刻化しているが、かつてから特にアジア人女性は、日本で人身売買の被害に遭ってきた。

先日報道された入管法改正案に反対する弁護士や支援団体による会見で、「おもてなしの裏でひとでなし」と発言したラサール石井さんの入管に対する批判は、外国人を「都合よく使い捨てできる労働者」としてしか見ない国の姿勢をよく表している。労働力になる人には入国許可を出しても、その家族が来てもらっては困るという態度や、移民家族の子ども達への支援もままならない状況は、まさに「ひとでなし」の国としてのアピール満載だ。

以前にも書いたが、私はアメリカで外国人として長年暮らす中で犯罪被害者となった経験がある。近所の人が警察に電話をしてくれたおかげで助かり、医療、福祉、司法へ繋げてもらった。犯人は事件の3日後に捕まり、裁判の結果、懲役20年という判決が出た。

文=大藪順子

人権
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