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2021.06.04 08:30

食のサステナビリティは「食器」からも 創業113年、老舗メーカーの先進性


陶磁器事業の循環型モデル移行を目指す「NIKKO Circular Lab」


耐久性が高く割れにくい同社の製品を強みに、陶磁器事業をより循環型のモデルへと移行することを目的として新たに立ち上がった組織横断型のプロジェクトが「NIKKO Circular Lab」だ。

ラボのテーマは「100年後の、循環する未来をデザインする」。創業100年企業のニッコーの次の100年に向けた事業をつくるのがそのミッションだ。ラボでは、サーキュラーエコノミーの原則に沿った循環型の陶磁器づくりを実現するべく、製品ライフサイクル全体において様々なプロジェクトに取り組んでいる。それらに対する技術的な課題も公開されている点も興味深い。ここでは、製品ライフサイクルの順にいくつかのプロジェクトをピックアップしてご紹介する。

陶磁器
NIKKO Circular Labの取り組み内容 (出典:ニッコー株式会社)

・循環型の設計:あらかじめ長く使えるように設計する

製品寿命を延ばそうとすると、まず思い浮かぶのが耐久性の向上だろう。設計の段階では、もともと同社が強みとして誇っていた耐久性を活かす方法と、飽きのこないデザインの両面からアプローチされている。

耐久性の観点
金やプラチナで描かれたお皿の絵柄は剥がれやすい。同社の高い耐久性に摩耗スピードが追いつかず、せっかくの丈夫な製品も絵柄が剥がれだけで廃棄を早めてしまう。そこで、従来品と比較して耐性摩耗が400倍、食器洗浄機への耐久性も5倍高める加飾方法「GP guard」を開発した。

デザインの観点
食を彩る食器。時季や流行によって買い替えることも少なくない。結果、まだ使える製品の廃棄につながってしまう。そこで、同社は色や形も流行り廃りがない「一生使える製品」の開発に乗り出した。シンプルだからこそずっと使い続けられる、ニッコーを象徴する製品だ。シリーズ名は、「リマスタード」。何万点もある過去のデザインから厳選したシリーズで、5月半ばにリリース予定だという。「飽きのこないデザイン」により、機能的な耐久性だけではなく情緒的な耐久性も追求する。

循環型製品への移行でも特に要となるのが「設計」の段階だ。その後の工程を左右するこの段階を同社は重要視しており、耐久性やデザイン以外にも、焼成後原料の再資源化や代替資源の研究開発など、様々な切り口からサーキュラーデザインの取り組みを始めている。

・原材料調達:カドミウムフリーの顔料開発

カドミウム

赤色やオレンジ色で加飾をする場合に、通常使われるのがカドミウムやセレン。彩度の高い色を出すためには欠かせないが、安全に取り扱うためには注意しなければならない原料だ。当然これらが製品から漏れ出すことはなく、ユーザーは安全に使えるのだが、同社は安心安全という観点からカドミウムを使わない「カドミウムフリー」顔料の開発に着手。着目したのが江戸時代初期から続く伝統的な技法「柿右衛門の赤」。商用レベルで生産できるように目下開発中だ。

・利用(Dish as a Service):取り皿専用のサブスクリプション

循環型ビジネスへの移行を図るうえで、重要な基盤となるのはモノの価値を最大化すること。その具体的な方法の一つが、製品のサービス化でありそのビジネスモデルとしての循環型サブスクリプションである。ラボでは、まず取り皿(取分け皿)に特化した循環型サブスクリプションサービスの試験運用を石川県金沢市内の飲食店で開始している。
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文=那須 清和

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