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2021.06.04 08:30

食のサステナビリティは「食器」からも 創業113年、老舗メーカーの先進性


三谷氏はこの重要な転換点において、会社の存続意義を改めて深く考えるに至った。

「どうすれば陶磁器事業を再建できるのかを考えるなかでコロナ禍に突入し、サステナビリティに本気で取り組む必要性を感じ、全社を挙げて移行を進めるようになりました。」と三谷氏は話す。

「なぜ私たちはこの事業を遂行する意味があるのか。何のために会社は存在するのか。存在してもよい会社とは。よいとは何を意味するのか。そんな自問自答を続けているうちに、顧客というよりもファンを増やす必要があることに改めて気づきました。そのなかで、ファンを増やしていくこととサステナビリティに取り組むことは同じことだと気づいたのです。」

コロナのような危機が訪れようとも、常連のファンを持っている飲食店は強い。たとえお店には直接来ることができなかったとしても、彼らが様々な形でお店の経営を支えてくれるからだ。これと同じことは、ニッコーとその顧客であるレストランやホテルとの関係にも当てはまる。

食器を納めるサプライヤーと顧客という関係性を超えて、ホテルや飲食店のシェフらに自社のことを応援し、ファンになってもらうためには、共感を生む想いやビジョンが必要だ。それこそが、同じ「食」に携わるものとして共通の課題でもある、食や食を取り巻く地球環境のサステナビリティだったのだ。

そもそも、ニッコーは経営理念に「環境も私たちのお客さまです」と掲げており、コロナ以前から環境問題にも真摯に取り組んでいた。その意味で、同社にとってサステナビリティやサーキュラーエコノミーを陶磁器事業の核に据えることは自然な流れでもあり、結果として事業の移行や社内の浸透も想定以上にスムーズに進めることができた。

「作って、使って、捨てる」リニア型の陶磁器業界の実情


三谷氏によると、陶磁器業界においても現状は「作って、使って、捨てる」というリニア(直線)型の仕組みになっているのが実情だという。しかし、世界を見渡すと陶磁器の原料となる良質の土や石の枯渇は顕在化してきており、国内では原料が枯渇寸前の地域もあるという。

まだわずかに原料が残っている地域でも、その土地に建物が建てられればそれ以上の採掘は難しい。陶磁器メーカーはどこもかしこも良質な原料をめぐって世界中を探し回っており、それがゆえに価格も高騰している。ピュアホワイトの陶磁器を特徴に持つ同社も当然、この課題に向き合わなければならない。

また、食器を使う側にも環境の観点から見た課題は多いという。特に業務用では食器は消耗品として使われる傾向にある。三谷氏の認識はこうだ。「市場では、お皿はすぐに割れるので海外製の安いものでもいいのではないかという認識が広がっています。しかし、一方では原料の資源枯渇が進んでいるのです。この実情を伝えていく必要があります」
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文=那須 清和

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