ビジネス

2021.06.04

食のサステナビリティは「食器」からも 創業113年、老舗メーカーの先進性

ニッコー株式会社 常務取締役 三谷直輝氏


また、これらの取り組みは、社内で思わぬ波及効果も生んでいるようだ。三谷氏によると、一連の活動の結果、他部署であるバンクチュール事業部(オーダーメイド・システムバス事業)で出るタイルの廃材を陶磁器の原料にする試みなど、事業部の枠を超えた資源活用・アップサイクルの動きが生まれているとのことだ。

サーキュラーエコノミー
ニッコーのサーキュラーエコノミーの全体像(提供:ニッコー株式会社)

上図が、これまでご紹介してきた現時点での同社のサーキュラーエコノミーへの取り組みを示した全体図だ。この図は、サーキュラーエコノミーのシステム図であるエレン・マッカーサー財団のバタフライダイアグラムの考え方をベースに作成されている。

同社の図には、主に3つのポイントがある。一つ目は、短期間で土に還る「生物資源」と、そのまま生物圏に戻すことが難しい「枯渇性資源」に分け、別のサイクルとして回すことを想定している点だ。食器の原料は土や石であり、生物サイクル・技術サイクルの両面から循環型のモデルを構築できる。二つ目は、製品の上流段階から下流段階まで包括的に取り組んでいるという点だ。そして三つ目は、リペアやリファービッシュなど、より小さいループが環境負荷が低いものとして優先されているという点だ。

この全体図は、それぞれの活動(点)を結ぶ「面」としての役割を果たしている。循環型モデルにおいて、どの手段が優先されるべきかを知る羅針盤にもなる。

次の100年も必要とされる企業へ


ニッコーは、NIKKO Circular Labを通じて循環型の食器づくりを進めるだけではなく、同時に飲食店のサステナビリティを支援するためのオウンドメディア「table source(テーブルソース)」もローンチした。「table source」という名前には、飲食店のテーブルがより豊かで持続可能な料理で彩られ、それを囲む人々の笑顔が生まれるようなアイデアの「源(ソース)」になりたいという想いが込められているという。

同メディアには、食のサステナビリティに関わる最新ニュースやコラム、レストランや持続可能なものづくりに取り組んでいる企業のインタビュー記事などが掲載されており、この中でNIKKO Circular Lab の取り組みも公開されている。

今後の展開を三谷氏に聞いた。「取り組みたいことは山ほどあります。例えば、弊社が新たに加盟した日本サステイナブル・レストラン協会(SRA)の会員レストランの皆様との共同での商品開発などです。弊社の取り組みに共感いただける方々と一緒に活動ができれば光栄です。」

同社の挑戦はまだ始まったばかりだ。「よいものを作っているという自負があるので、どのような形でもよいから製品と企業を残していきたいし、事業を営むからには、そこを目指さなければならないという思いを持っています。そのためには、お店の皆様と対話をしながらサステナビリティに取り組み、ニッコーのファンになっていただける方を増やしていきたいです」と、三谷氏は展望を描く。

創業100年を超えるニッコーが、次の100年も生き残り続けるためには、食を取り巻く地球環境はもちろん、生産者やレストラン、ホテル、サプライヤーなど、様々な立場から食に関わる事業を営んでいる人々とともに業界全体のサステナビリティに取り組んでいく必要がある。SRAへの加盟はそのための一歩であり、本当の旅はこれからはじまる。


(この記事は、Circular Economy Hubから転載したものです)

連載:国内外のサーキュラーエコノミー最新動向
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文=那須 清和

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