コンピュータの専門家は、異なるソフトウエア・システム同士で「話ができるように」することを「インターオペラビリティ(相互運用性)」と呼ぶ。この問題は、患者のデータ共有に関する新たな米連邦規則について議論されていた20年1月に、大きな注目を集めた。エピックは当時の声明で、患者の治療記録を第三者と共有することは、たとえ患者自身の要望に基づくものであっても「患者のプライバシーが大きな危険にさらされる」と述べている。
こうしたエピックの考え方に、アップルやマイクロソフトをはじめほぼすべてのIT企業が反発。最終的に連邦政府は、エピックやその他の企業が患者のデータを独占することを禁止した。
連邦政府の新たなガイドラインが今後数年のあいだに浸透していくことを受けて、多くのベンチャーキャピタリストがいくつもの小規模なスタートアップ企業に多額の投資を行っている。そうした企業が、いずれエピックの牙城を切り崩しにかかるかもしれない。調査会社CBインサイツによると、医療系ITベンチャー企業への融資額は20年に36億ドル超と過去最高を記録したという。
だがフォークナーは、シリコンバレーの企業がこぞってヘルスケア市場に参入してきても、まったく気にならないと言う。「ごく少数の会社だけが大きな成功を収めるでしょう。残りの大多数の会社は、そうならないと思います」と彼女は言う。
「『私のデータをここに送ってください、あそこに送ってください』という患者からの要請に応えなければならないのは、わが社でもなければ医療システムでもありませんから」
あと2年余りで80歳の誕生日を迎えるフォークナーだが、引退するつもりはまったくないと言う。
「引退してしまうと生きる気力を失って、私は毎朝何のために起きるのか、この1日は何のためにあるのかと考えてしまいそうで。いまは、朝起きるたびにこう思うんです。今日1日で、いろいろなことをどうやってやり遂げようかしらって
ジュディ・フォークナー◎エピック・システムズ創業者兼CEO。1943生まれ。米ディッキンソン大学、ウィスコンシン大学を経て、79年にヒューマン・サービス・コンピューティング社(のちにエピックと改名)を起業。現在保有する47%のエピック株は時価総額60億ドル。自力で成功した女性ランキングで全米2位。
5月25日発売のForbes JAPAN7月号は、「ビリオネア大異変」特集。10億ドル以上の資産を持つ億万長者ランキングで、2021年は新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、なぜ史上最多2755人ものビリオネアが生まれたのか? 彼らのビジネスモデルは? 新時代のビリオネアの特徴と成功の秘訣はこちらから。