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2021.05.26 07:00

デジタル医療業界の「女帝」は77歳、自称オタク、引退の予定なし


大人のディズニーランド


幼いころから難問に挑戦するのが好きだったフォークナーは、1965年にウィスコンシン大学情報工学科の博士前期課程に進む。その後ウィスコンシン大学の内科医グループの下で働きはじめ、患者の情報を長期にわたって記録するためのデータベースを開発した。だが、自分のソフトウエア会社を始める決心がつくまでには、さらに数年の時間(と同僚からの多くのお墨付き)を要した。

友人や家族から借金をしたり自宅を抵当に入れたりして資金をかき集め、フォークナーは79年に自身の会社を立ち上げる。設立当初の企業評価額は7万ドル(現在の約27万ドルに相当)だったが、最初の20年でエピックは着実に成長。毎年ひと握りほどの新規顧客を獲得していく一方、提供できる製品やサービスを増やしていった。80年代後半には会計ソフトを新たに加え、90年代初頭には、外来診療専門のクリニック向けにグラフィカル・ユーザー・インターフェイスを採用した。

2004年、創業以来最も大きな取引が成立する。米国の3大健康保険システムの一つであるカイザーパーマネンテと、40億ドルの契約を結んだのだ。エピックの取り分はおよそ4億ドルだった。

その1年後、エピックは本社を現在のキャンパスに移転した。そこは「大人のディズニーワールド」だとよく言われる。本社ビルには世界最大級の地下ホールがあり、ホグワーツ魔法魔術学校にちなんで「大広間」と呼ばれている。ほかにも「地獄行きエレベーター」や巨大なツリーハウスなど、ファンタジーの世界に迷い込んだかのような一風変わった建築物や彫像が無数にある。


『不思議の国のアリス』の世界に迷い込んだかのようなエピックの本社。フォークナーいわく「退屈な環境にいて、美しいソフトウェアを開発できるはずがない」。

毎年開催されるエピックの顧客集会でフォークナーがコスプレをすることはよく知られている。世間の注目を集めるのが嫌いな「オタク」を自称する彼女のイメージには、いささかそぐわないように思えるが、彼女は弁明するかのように言う。

「内向的な人は外向的な人のようにふるまうことができますからね。でも、外向的な人が内向的な人のようにふるまうことはできないそうですよ」
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文=ケイティ・ジェニングス 写真=ジャメル・トッピン 翻訳=波多野理彩子

この記事は 「Forbes JAPAN No.083 2021年7月号(2021/5/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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