だが、ソーシャルディスタンスの確保も必要なしとしたこの規制の緩和は、時期尚早ではないのだろうか?新型コロナウイルスの新規感染者は依然として確認されており、より感染力の強い変異株への感染も拡大している。
それにもかかわらず、CDCが指針を変更する背景には、次の3つの理由があると考えられる。
1. ワクチン接種が行われている、2. 接種をしていない(したくない)人がいる、3. マスク着用やソーシャルディスタンス確保を嫌がる人がいる
指針の変更は全体として、多くの人に疑問を感じさせるものだったようだ──無理もないことだ。新たな指針は、次の5つの点に関する懸念を生じさせている。
1. 接種済み、または未接種の人をどう見分ける?
米国は公式な「ワクチンパスポート」システムを導入していない。自己申告に基づき、接種を受けたかどうかを判断するのは困難だろう。
自己申告システムは、個人の誠実さだけに頼るものだ。だが、今の米社会について考えるとき、最初に浮かぶ言葉は「誠実」ではなさそうだ。例えば、ハフィントン・ポストによると、マッチングアプリを使用している米国人の53%は、プロフィールに本当のことを書いていない。
2. ワクチンは感染を100%防ぐわけではない
新型コロナウイルスのワクチンの有効率は、重症化の予防については70~95%とされており、かなり高い。だが、それでも100%ではない。さらに、あなた自身の感染と他の人うつすことを防ぐという点での有効率は、いまだ明確ではない。
先ごろフォーブスでも伝えているとおり、大リーグ(MLB)のニューヨーク・ヤンキースでは、接種を完了していた8人が感染しており、「ブレイクスルー感染」の発生も指摘されている。
3. 出現する変異株の影響は?
新型コロナウイルスは、変異率が高い。その理由の一つは、複製の過程でエラーが起きることだ。このエラー(変異)はウイルスの力を弱める場合もある一方、より強い変異株を生み出す場合もある。
開発されたワクチンが現在流行している株に有効であることは、将来に出現する変異株にも有効であることを意味するわけではない。また、新たな変異株は、確認されたときにはすでに感染が拡大している可能性もある。