大江千里が47歳でニューヨークへ渡り、ジャズピアニストを目指した本当の理由

還暦を迎えたジャズピアニストの大江千里 (c)Tracy Ketcher


卒業してからも形にしなくてはと無我夢中で制作を続け、2012年に52歳でレーベルを起業。ジャズピアニストとしてアルバム制作や、コロナ禍前まではツアーも続けていました。
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2020年コロナ禍のニューヨークにてロックダウンも経験した。ジャパンツアーは中止に

メロディが自分らしさ。口ずさめるジャズをつくりたい


60歳を迎えた今、確かに体という器は若い頃のようにいかない部分はもちろんありますよ。だけど、その器からはいまエネルギーやアイデアがどんどん湧いてきて、日本で疲弊していた時とはまるで違う。エネルギーが溢れすぎて、むしろ落ち着け!って言いたいくらいです(笑)。書籍の副題を「60歳から始まる青春グラフィティ」としたのですが、まさにそんな気分を表したかったんです。

ポップスはメロディと言葉の結びつきで生まれるものですが、ジャズはインストゥルメンタル。言葉を横に置いた途端に、解き放たれたようにおもいっきり自由になりました。
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ジャズの1枚目、2枚目のアルバムを制作しているときは、難しくなければジャズじゃない、複雑でなければジャズじゃない、と学校で学んだことをすべて入れ込みたいと思っていたきらいがあります。

でも最近は、ジャズでありながら、みんなが一緒にメロディを口ずさめるような曲がつくってみたい。ポップスとジャズの両方を経験した僕になら、もしかしたらそれができるかもしれない。世界が口ずさむジャズ。そんなものができたらめちゃくちゃ素敵だろうと思って、ここニューヨークでいまも挑戦を続けています。


大江千里(おおえ・せんり)◎1960年大阪生まれ。2008年、47歳でNYのニュースクール大学に留学。2012年から米国で音楽活動を開始。コロナ禍に発表した「Togetherness」がAP通信により「パンデミックの間に作られた40曲」のひとつに選出される。2016年から「note」でエッセイやレシピ、動画のコンテンツの配信を始める。2021年3月にNYシリーズの3冊目の『マンハッタンに陽はまた昇る 60歳から始まる青春グラフィティ」を刊行。2年ぶり7枚目のジャズアルバム『Letter to N.Y.』が7月21日にリリース。

構成=松崎美和子 写真=本人提供

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