5. すべての市民の支持を取り付けなければならない
抑制策への市民の協力が得られないことや、ワクチン接種を躊躇する声も上がっている現状により、急速に拡大する非常事態への対応支援を市民に促す難しさが明らかになりました。調査によると、人々は、急拡大し期間が長期に及ぶ危機や、遠く離れた地で起きている危機の影響を過小評価するということがわかっています。同時に、一貫性のないコミュニケーションや行政の誤算は信頼喪失を招き、誤った情報を生むことにもなりかねません。
現代の経済・社会全体にエネルギーが普遍的に存在していることを考慮すると、エネルギー転換はシステミックな影響を及ぼすものであり、転換には個人の積極的な参加が必要になります。予定を数十年先に延長し、人類の共通問題に対する個人の行動の不足や、世界の遠い場所で起きている極端な気候現象を把握しているだけでは、エネルギー転換の規模とスピードの必要性が個人に伝わらない可能性があります。このことは、エネルギー転換に関わるリテラシーの強化と社会のあらゆる層から積極的な参加を得ることが急務であることをはっきりと示しています。
輸入国ながら高スコアの日本 さらなる加速なるか
2021年エネルギー転換指数において、日本は115カ国中37位につけています。過去10年間、日本のエネルギー転換指数のスコアは全般的に比較的安定して推移してきました。エネルギー輸入国という元来不利な立場にありながらも、エネルギー源および輸入元を多様化することで、日本はエネルギー安全保障において高いスコアを維持しています。
環境の持続可能性の分野で日本のスコアは上昇しています。さまざまな需要セクターにおいてエネルギー効率と生産性を向上させる取り組みを継続してきた結果、GDP当たりのエネルギー強度が低下したことが、その主な要因です。
しかし、福島第一原子力発電所の事故を受けた原子力発電停止の影響で発電に使用する石炭や天然ガスの比率が増え、日本のエネルギー構成における炭素強度はこの10年で上昇する結果となりました。この問題に対処する上で、グリーン水素や二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)を中心とした新興のエネルギー技術を役立てられる可能性があります。
政治の関与、イノベーションのための投資と協力、ESG投資の増加など、日本ではエネルギー転換を実現するための環境が着実に改善しています。日本がこのほど実質ゼロ目標を表明したことで、エネルギー転換のモメンタムは一段と加速するとみられます。ただし、セクターごとのロードマップを作成し、排出削減が困難なセクターも含め、そのロードマップに中間目標を設け、期限どおりの前進を徹底させることが必須となるでしょう。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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