2. 経済回復がすべて等しくエネルギー転換を後押しするわけではない
国際通貨基金(IMF)によると、世界経済の正常化がなかなか進まないなか、新興国および発展途上国の経済回復はさらに遅れる予測が示唆されており、多くの国のGDPがパンデミック以前の水準に戻るのは2023年以降になるとの見解が示されています。
経済回復がばらつくことやそれに伴う財政上の問題が、こうした国におけるエネルギー転換への投資を促す力を限定させることになります。短期的には、ワクチンの生産と流通を加速させ、公平な分配を徹底することが、新興国および発展途上国の迅速な経済回復を実現するために重要です。
3. 最も脆弱な層を保護しなければならない
パンデミックは、所得の不平等がもたらす破壊的な影響が「感染リスクの増大」と「所得・雇用喪失がもたらす経済的コスト」にあることを浮き彫りにしました。同様に、エネルギー転換の影響も、不均衡に社会の脆弱層に及ぶと考えられます。
例えば、従来型エネルギー源のバリューチェーン全体で起こる労働市場の混乱や、補助金制度の改正または炭素税に起因する支払い能力の問題などです。このため、エネルギー政策や投資判断の評価に包摂的なアプローチをとり、「公正な移行」の道を優先して分配的思考に対処することが、エネルギー転換を包摂的に実現するために不可欠です。
4. 国際協調の課題は今後も残る
パンデミックは、国際協調によってグローバルヘルスの非常事態を早急に鎮静化し、この事態に対応することの限界をあらわにしました。エネルギー転換の主因である気候変動は、すでに世界の多くの地域で食料や水不足を引き起こしています。
炭素税が貿易と競争力に影響を及ぼすと見込まれることに加え、近い将来には、気候変動の影響から前例のない規模で移住の波を引き起こすと予想されます。こうした事態を受け、グローバルな連携の強さと有効性がこれまで以上に試されることとなり、すべてのステークホルダーグループを対象とした強固な協力メカニズムを構築し、この世界共通の課題に対処することが不可欠になります。