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朝日新聞外交専門記者


しかし、外交の世界でよく使われる言葉に「There is no free lunch」という表現がある。バイデン氏が提供したハンバーガーやクラブケーキの請求書はどうなるだろうか。

日米首脳会談では、「日米気候パートナーシップ」「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」という2つの付属文書も含め、計10ページに及ぶ共同声明が発表された。だが、日米関係筋によれば、日本側が米国に打診した共同声明草案は1つの文書になっており、付属文書は存在していなかった。これに対し、米国が日米首脳会談で具体的な成果を強調したいと要望してきたという。

4月に入り、ホワイトハウスのキャンベル国家安全保障会議(NSC)インド太平洋調整官が1泊2日で来日し、日本側と調整した結果、付属文書2つを含む文書に仕上げたという。ただ、日本の専門家の間では、「コア」の付属文書について、日本を米国主導のサプライチェーンに取り込み、日中の経済関係を弱める狙いも込められているのではないかという指摘が出ている。中国が今後、日本の経済界に対してハラスメントを加えてくる可能性もある。菅政権は現在、新型コロナウイルス対応や解散・総選挙問題、東京夏季五輪の開催問題などで忙しく、日米首脳会談のフォローアップには手が回らない状況だ。

また、21日に発表された米韓首脳共同声明には、「台湾海峡の平和と安定の重要性」が盛り込まれた。台湾外交部は「心からの歓迎と感謝」を表明したが、中国の国営メディア・環球時報は会談前の21日、「(米韓首脳会談での台湾への言及は)韓国が米国の脅迫によって毒薬を飲むのと変わらない」と指摘していた。中国は内政干渉だとして今後、韓国に厳しい態度で臨む可能性が高い。韓国政府の元高官は「文在寅政権は今後、米国と中国との間で右往左往するのではないか」と述べ、韓国外交の将来を懸念する考えを示した。

結局、日米と米韓の二つの首脳会談で大きな実利を得たのは米国だった。ハンバーガーとクラブケーキの代金は高いものになりそうだ。

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文=牧野愛博

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