菅首相は訪米を終えた直後、4月19日に開かれた自民党役員会で、ハンバーガー会食についてこう報告した。「いやー、自分が言いたかったことを、バイデンに先に言われちゃってねえ」。バイデン大統領は会食の際、「あなたも私もたたき上げ」と語りかけ、菅首相の気持ちをくすぐったのだという。菅氏は、話がはずんで、ハンバーガーを食べる時間もなかったと、嬉しそうに周囲に語ったという。菅首相にとって、もはやメニューなどどうでもよい気分だったのだろう。
文氏も、ホワイトハウスの中庭のテラスでクラブケーキを振舞われて気分が良かっただろう。外国首脳の参加は初めてという米軍の名誉勲章授与式にも出席し、そこにはバイデン大統領夫人のジル氏も加わった。文氏は会談後、自身のツイッターで「最高の歴訪、最高の会談だった」と自画自賛した。
「いかにもバイデン氏らしい」。日本と韓国の首脳をもてなした様子をみていた、日米の関係者は一様に口をそろえた。関係者の1人は「バイデン氏は、いわば永田町のメンタリティーをもっている人。相手を持ち上げて、気分良くさせるのがとても上手だ」と語る。オバマ政権でのバイデン副大統領の役割は、もっぱら議会対策だったという。
2013年2月、安倍晋三首相がオバマ大統領と会談した際、有名な日本メーカーの「山田パター」をプレゼントした。ホワイトハウスのオーバルオフィス(大統領執務室)で、安倍首相とオバマ大統領、バイデン副大統領らとの少人数会談が行われた。その後、一行が拡大会談の場所に移動する途中、通路の一角に「山田パター」が飾られていた。それを見つけたバイデン氏が、「オー、ヤマダパター」と声を上げ、過去に豪州選手がこのパターを使って世界最少スコアをたたき出した話をしてみせた。
おかげで、拡大会談では冒頭、安倍首相の祖父の岸信介首相がアイゼンハワー大統領とゴルフをした話で盛り上がり、雰囲気が一気に和んだという。もちろん、バイデン氏が最初から、山田パターの由来を知っていたわけではない。日本側を喜ばせるために、事前に仕込んでいた演出だった。バイデン氏は副大統領時代、安倍首相と東南アジアで会談した後も、偶然を装って、同行していた夫人を紹介して、首相を喜ばせた。