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ㅤ鎌倉市在住のフリーランスライター兼編集者


杉田:そうですね。作品を言葉で伝えるって難しくて、作家が発した言葉を頼りに解釈されるので、あまり多くは喋らず、ヒントだけ言うようにしています。

面白いもので、相手の語る言葉で気づかされることも多いんです。対話で鍛えられるというか、相手と喋りながら未完成な部分が埋まっていくというか。それが現代アートの楽しいところだと思います。

遠山:おっしゃる通り、現代アートの面白さというのは「作家が生きている」というところですよ。さきほど「作家と鑑賞者で半々」と言ったけれど、「過去と未来も半々」だと思う。ピカソやゴッホは過去しかないけれど、現代アートの場合は、すでにでき上がっている過去とこれからの未来をもち合わせているという意味でね。

杉田:ええ。あと、正解だけではなく、誤解されていくのも大事な気がしますよね。

例えば「ゴッホは日本に心酔し多大な影響を受けた」というけれど、当時の日本はそれほどのものでもなかったかもしれない。ただ、そんなゴッホの誤解のおかげで素晴らしい作品が残された。

以前、僕の抽象画を買ってくれたお客さんが、壁にかけた絵をインスタにあげてくれたんだけど、逆さまだったことがあるんです(笑)。でも、それがあまりにも美しくて、ポートフォリオはそちらを正解にしました。現代アートは着地点が定まっていないから、誤解も一種の正解にできる許容範囲が広いと思います。

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遠山:杉田さんはすごく珍しいタイプですね。アートって、普通は狭めていくというか、それこそ正解に向けて、アカデミアの理論をもって突き詰め、掘っていく。杉田さんは、開いて、受け入れていく。ご自身の中に核があるので、「どう開いても自分は自分でしかない」とわかっているんでしょう。逆に、外の何かを軸にしていると、自分を開くのは怖いと思うんです。

杉田:ああ、そうかもしれません。

遠山:私は自分のビジネスにおいて「自分事」を大事にして、マーケティングはしません。そうすると、うまくいけば嬉しいし、うまくいかなくても、人や景気やコンサルタントやお客様のせいにしないで済む。変更もできるし、中止もできる。「自らすべてを決定できる」って、何かと楽なんですよ。

実はそれは、アートから学んだことなんです。アートはビジネスではないが、ビジネスはアートに似ている。

杉田:僕も起業家とアーティストって近い部分があると感じます。インディペンデント性や主体性もそうだし、自らが楽しんで世の中をよくしたいという思いや、人の真似をせずにリスクをとって世の中にない新しいものをつくりだす精神、コラボを厭わない協調性など、実によく似ています。

遠山:本田宗一郎だって、根っこは自分が思い描いたシーンをなんとか具現化していく、まさにものづくりの極みの人ですしね。彫刻家が御影石や木材などの大きい塊から自分だけが見えているものを彫り出していくような。

違いを言うなら、アーティストはひとりでも可能で、ビジネスはチームを組まないとできない。起業家はビジョンや方向性を言語化してチームに伝えないといけないし、ある程度ルールにはめ込んでいかないといけない。絵画なら一枚の絵で成り立つけど、ビジネスは4コマ漫画で、起承転結が必要という感じでしょうか。

ちなみにこの作品、ArtStickerでエントリー制での販売、やらせてもらえませんか?

杉田:感激です! すごく嬉しいです。(後編に続く)


とおやま・まさみち◎1962年、東京都生まれ。2000年、株式会社スマイルズを設立し、代表取締役社長に就任。食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」、ネクタイ専門店「giraffe」等を展開する。18年11月、アートと個人の関係をテクノロジーで変革する新会社「The Chain Museum」をクリエイター集団PARTYと共同出資で設立。

すぎた・ようへい◎1983年、三重県生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科在学中に革新的な絵画を次々に考案し、さまざまな絵画コンクールで受賞を重ねる。現在は個展を開けば即完売という現代美術家のひとり。2020年、婚活サバイバル番組『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン1(Amazon Prime Videoにて独占配信中)に参加、「杉ちゃん」として人気を博す。5月27日から6月10日まで「マネゴン〜太陽と月2」をArtStickerでエントリー制販売

取材・構成=堀 香織 撮影=山本マオ

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