BMWやフォルクスワーゲン、ダイムラーなどの自動車メーカーにバッテリーを供給するCATLの株価は、この1年間で150%以上も高騰した。現在52歳のCATL創業者のロビン・ゼン(曾毓群)は現在、世界で47番目に裕福な人物であり、その保有資産は325億ドル(約3.5兆円)に達している。ゼンは同社の約25%の株式を所有している。
同社の2人の共同副会長らも、それぞれ147億ドルと66億ドルの資産を持ち、2015年に株式を取得した初期投資家のPei Zhenhuaも推定85億ドルを保有している。さらに、4人の管理職ともう一人の初期投資家1人を含む5人が、2021年のフォーブスの世界の富豪ランキングに新たに加わった。
合計で920億ドルの資産を保有する9人のビリオネアを生み出したCATLの成長ぶりは、わずか10年前に設立された企業としては驚異的だ。グーグルとフェイスブックが送り出した資産10億ドル以上の富豪は現在8人で、CATLの実績は彼らを上回っている。
電子部品メーカーのエンジニアだったロビン・ゼンは、1999年にリチウムイオン電池の製造会社ATL(アンペレックス・テクノロジー・リミテッド)を立ち上げ、この分野に乗り込んだ。彼がどこから創業資金を調達したのかは突き止められていない。
ATLは、携帯電話やノートパソコンなどの家電製品向けの充電池に特化した会社で、アップル向けにも電池を供給していたとされる。そのATLから車載用バッテリーに特化した会社として2011年にスピンオフしたのが、CATLだった。同社は設立の翌年に、BMWと電池供給の契約を結んでいた。
政府の後押しで成長
中国がクリーンエネルギー産業の育成に注力する中で、CATLは政府からの支援を取り付けた。中国政府は2015年に、LGやサムスンなどの外資を除く、国内企業50社以上を、推奨バッテリーサプライヤーに指定した。その後、中国の自動車メーカーは政府からの助成金を得るために、CATLを筆頭とする国内のサプライヤーから電池の供給を受けた。
しかし、推奨リストはCATLが深圳株式市場に上場した翌年の2019年に廃止された。
中国は今や世界最大の自動車市場となっている。バッテリー関連に特化したコンサルティング会社の米アダマス・インテリジェンス社によると、2018年に世界で販売されたすべての新車の乗用車のEVバッテリーに、CATLのプロダクトが占める割合は13%に及んでいた。そして2020年に、その数値は22%に伸びていた。この分野でCATLを超えるシェアを誇るのは、市場の28%を占めるLG Energy Solutionsのみとされる。
IHS Markitは、2020年に世界で250万台近くのEVが販売されたと推定している。
CATLのリードは、母国の中国ではさらに大きい。アダマス社によると2020年に中国で配備された新車EVのバッテリーに占めるCATLのシェアは46%で、2018年の26%から伸びていた。同社の母国のライバルのウォーレン・バフェットが支援するBYDの中国でのシェアは16%で、CATLから遠く離れた2番手だ。
CATLの2020年の売上高は10%増の78億ドルで、純利益は22%増の約8億6000万ドルだった。