ライフスタイル

2021.05.23 12:00

日本で生まれたヒット作、新型ホンダ・フィットが小型車の王者を狙う


もともと女性ユーザーも多いフィットには、こういうスタイリングは打ってつけだろう。一列目のシート調整は手動にもかかわらず、ステアリングホイールはテレスコとチルト機能付きだから、自分にぴったりのドライビング・ポジションを設定するのも楽ちん。シートの構造も新しいし、クッションの弾力性もいいので、長距離ドライビングでも疲れない。

9インチのナビ・オーディオには、お約束のアップル・カープレイや、アンドロイド・オートが搭載されているから、安心できる。後部席のヘッドルームやレグルームはたっぷりあって、面白いフィーチャーとして、後部席を持ち上げたら、その空いたスペースには植木のような背の高い物も置くことができるので、とても便利。

一方、もう少し考えて欲しかったのは、クラクションの音だね。まるで、アニメの世界の中で生まれたような不愉快な音。なんか、アメリカの有名なカートゥーン「ロードランナー」の「ミミーっ」と言う鳴き声みたいだ。

さて、話題のe:HEVはどうなのか。

やはり、2モーター・ハイブリッドのおかげで、とても滑らかでパワフルな加速が目立つ。走行用と発電用の2つのモーターを持つところがポイント。今回の大きな進化は、2つのモーターなどの部品の小型化で、98psを発生する1.5Lのエンジンと同様にボンネットの下に上手く入れ込んでいる。

街中での通常の低速走行では、最高出力109PSの走行用のモーターだけで前輪を駆動し、エンジンは発電のみ。発進時からパワフルで、しかも加速性が滑らかで静かだ。高速道路で70km/h以上の速度で走る場合、モーターだけでは物足りないので、エンジンが作動して、モーターとともにタイヤを駆動する。

この新2モーター・ハブリッド・システムはCVTと組み合わせているが、アクセルをベタ踏みしても、エンジンの回転がそれほど高まらない制御になっており、違和感のない加速性は素晴らしい。実は今回、CVTの変速が旧型よりスムーズだというより、まるで普通のA/Tが変速するような感覚に仕上がっているのに感心した。ホンダはWLTCモードではの27.4km/Lの燃費が出ると言っているが、リアルワールドでは20km/L弱ぐらいだろう。

前から見たフィット

新型フィットはボディ剛性が上がっているし、コーナーに入った時のレスポンスが旧型より明らかに進化している。狙ったラインをピタッとトレースしてくれて、ボディロールも少なく、思い切りプッシュしない限り、アンダーステアは出ない。今回、新しいステアリング・システムのVGR(バリアブル・ギア・レシオ)がつくことによって、コーナーにターンインした時の応答が早く、適度に軽い手応えで狭い路地での運転もしやすくなった。

ホンダSensingという安全支援システムの進化も無視できない。今話題の踏み間違え防止の問題に対応したこのシステムでは、衝突軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、後方誤発進抑制機能、ACC、レーンキープなどが搭載されることによって、クラストップレベルの安全装備と言える。標準装備のACCは車線をキープしながら、しっかりと前方のクルマを追従してくれるので、安心できる。

女性と男性どちらのテイストにも合う、この微笑む新デザインは、三角窓による視認性がよくなり、安全性も磨かれ、2モーターのおかげで走りがグーンと向上した。187万円からの新価格も魅力。

国際モータージャーナリスト、ピーターライオンの連載
「ライオンのひと吠え」過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事