この一年、企業や行政における市民協働や官民連携の担当者から、「どのようにして、オンラインでイノベーションを起こすのか? リアルでないと難しいのではないか?」という質問を受けた。
確かに、実際に対面出会う時の熱量をオンラインで再現することは困難だ。答えは私もまだ分からない。一方で、オンラインの方がスムーズに進行できた側面もある。例えば以下などは、リアルでできていなかったが、オンラインで実現した。
・画面越しの方が、より相手の話に集中でき、理解につながる
・一人あたりの発言機会・時間が制限されるため、無駄を削ぎ、本質的な発言を心がけるようになる
・Googleのドキュメントやスプレッドシート等を使うことで、対話の可視化や共有がスムーズになる
1年をかけて行う「つなげる30人」プロジェクトの中でも、最も重要視しているのが、オープンセッションだ。5〜6人1組のチームがそれぞれ自分たちで「問い」を立て、関係するステークホルダーを招いて意見交換やアイデア出しを行い、企画の推進をしていく。
今回このワークもすべてオンラインで開催した。そこで得た収穫は、リアルではなかなか接点を持てなかったり、出会うことが難しかったりした人々に参加いただけたことだ。時間や距離のハードルが下がったというのが大きいだろう。それにより、これまで聞けなかった貴重な声をより企画に反映することができた。
3月、オンラインでの最終報告回には渋谷区長、副区長も参加した
スタートアップメンバーの活躍
昨今は、地域課題解決を目的としたスタートアップも多く、「つなげる30人」と相性が良いのではと感じていた。しかし、これまでは声をかけても「コンセプトには賛同するが、リソースを充てられない」「現場としては興味があるが、会社を説得できない」などの理由でなかなか賛同を得られず、第4期まで参加したスタートアップは各期2社、合計8社のみだった(毎年、企業は20社ほど参加している)。
第5期は、コロナ不況で大企業の参加見送りが多かったこともあり、創業5年以内のスタートアップ枠を参加費用も下げて5枠設け、丁寧に参加を打診。地域との協働に意欲のあるアプリ開発会社、不動産投資会社、地元社会人サッカーチームなど5社をメンバーに迎えることができた。
いざ動き出してみると、チーム形成やプロジェクト推進の際、スタートアップがリーダーシップを発揮する場面が目立った。これは、彼らが普段から「背水の陣」のような環境で事業に熱量高く挑んでいるからかもしれない。
それにより「渋30」が活発化したのはもちろん、スタートアップメンバー自身もあらゆる面で地域とのつながりが深まった。協働事業を進めるうえで必要となる行政からの協力を得たり、地域内のステークホルダーと実証実験を行ったり。それが、生活者・消費者目線でのサービスの再設計に活かされている。
コロナ禍の孤立支援と飲食店支援を同時に行うプロジェクトの実証実験イベント