コロナを言い訳にしない。渋谷発・地域イノベーションの現在地

2021年5月現在、コロナ禍は継続し、その収束は見通せない状況だ。在宅勤務やオンラインミーティングにメリットも感じる一方、リアルに集まる活動は延期や中止を余儀なくされ、そうした繋がりを重視する地域コミュニティの維持や向上は大きな課題となっている。

私は、渋谷区内の企業・行政・NPOによるクロスセクターのまちづくりプロジェクト「渋谷をつなげる30人」(以下、渋30)に5年前から取り組んでおり、コロナ以前は当たり前のように30人が集まり、街への想いを共有したり、地域課題を解決するアイデアを出し合ったりして相互理解を深め、様々な新しいつながりや企画を創造してきた。

まさかこの取り組みをオンラインで展開しようとは思いもしていなかったが、第5期となる2020年度は、セッションの大半をオンラインで行った。他エリアの「つなげる30人」も、京都は全てをオンラインで、名古屋・横浜も3分の2をオンラインで実施した。

この状況を極力ポジティブに捉えようと、日々暗中模索ながらも工夫を凝らし、オンラインであっても最大限の効果を発揮できるように努力を重ね、結果的に一定の成果を出すことができた。今回は、コロナ禍で見えてきた新しいコミュニティ運営の形やイノベーションのあり方などについて整理していきたい。

「コロナ禍の変化の兆しをイノベーションに」


これまで「地域課題を解決しよう」と言うと、どこか「困っている人を助けよう」というニュアンスが感じられ、その課題を自分ごと化するまでに時間を要するものだった。しかし、コロナ禍で、言わば誰もが課題の当事者となった。影響を受けなかった人はほとんどいないのではないだろうか。

そうしたなかで、物事を少しでもポジティブに捉え、この状況にふさわしい企画を作ることを目指し、「渋30」では通年のテーマを「コロナ禍の変化の兆しをイノベーションに」と設定した。そして、コロナ禍だからこそ、岩盤のように動かないと思っていた“当たり前”や“常識”を疑い、壊していこう、という機運を作った。

結果的に、2020年度の「渋30」からは、以下3つのプロジェクトが立ち上がり、大きな成果を残すとともに現在も活動が継続している。

・アーティストのデビュープロセス
・就職活動
・孤立支援と飲食店支援の両立
・地元スポーツチームの応援を通じた地域コミュニティづくり
・絵本を通じた渋谷区の広報支援


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文=加生健太朗

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