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地方発イノベーションの秘訣

食のスタートアップで第1期の出店者として選ばれた仲塚元秋

神戸・三宮の顔でありながら1995年の阪神・淡路大震災で損壊し解体された通称「阪急会館」(神戸阪急ビル東館)。先月、26年ぶりに、かつてのデザインを受け継いで、神戸三宮阪急ビルとして再建された。

そのなかにある食料品売場に、パリでミシュランの星を持つレストランで働いた料理人が「店」を出している。ただ、店といっても独立したものではない。厨房を備えたいくつかの店が飲食スペースを共用するフードコートのようなスタイルだ。

実はこの一区画は、神戸市と、阪急電鉄沿線でスーパーマーケットを経営する阪急オアシスが、独立開業しようとする料理人をサポートするために提供した場所。神戸市と阪急オアシスによる「食のスタートアップ」プロジェクトだ。

料理人が腕を振るいやすい契約で


飲食店の起業を目指している人に、チャレンジ場所の提供と起業に向けた支援を行うこの取り組みは、神戸市内における飲食店舗開業の促進を目的としている。今年の1月に神戸市と阪急オアシスが正式に協定を締結し、スタートした。

阪急オアシス神戸三宮店の岡田行功店長は、プロジェクトが生まれた背景を次のように語る。

「このフロアは単なるフードコートではありません。7年前に『キッチン(飲食)とマーケット(物販)の融合』という考えのもと、『買う』『食べる』『集まる』をキーワードに新たな業態として出店準備を進めてきました。

ところが、コロナ禍でお客さまが集まることが難しくなり、食材をつくる生産者や食事を提供する料理人たちも活躍の舞台が減ってしまった。

そこで、キーワードを『集まる』ではなく、お客さまと料理人と生産者が『つながる』に変更。コロナ禍の飲食店を支援するための企画が新たに社内で持ち上がりました。

とはいえ、当社は料理人との接点がほとんどありません。どこに相談すればいいのかわからないなかで、神戸市役所に声をかけた。そこで、開業や独立をサポートしている神戸市産業振興財団を紹介してもらったんです」

両者が顔を合わせたのは、神戸三宮阪急ビルのオープンまであと半年に迫った昨年11月のこと。すぐに意気投合し、はじめて話をした翌週には、それぞれの役員クラスで合意。そして、年が明けた1月、「食のスタートアップ」と呼ばれるこのプロジェクトがスタートした。

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阪急オアシスの一画にある「Samo料理店」

飲食店の新規出店は、厨房設備など多額の初期投資とビルオーナーに支払う保証金が大きなハードルとなる。固定客が確保できていないと、月額の賃料も大きな足かせとなる。

そこで、阪急オアシスがキッチンなどの設備を準備し、保証金も不要にした。支援期間の3カ月は固定賃料でなく、売上額の20%と専用レジ使用料(月額1万5000円)だけ支払えばよいという、料理人には腕を振るいやすい契約を設定した。

文=多名部重則

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