30U30

2021.05.22

望まない改姓は「社会的な死」 選択的夫婦別姓を阻む、日本の事情|#U30と考える

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局長の井田菜穂(写真=Yuriko Ochiai)


自分を否定されない社会のために、バトンはまだ渡したくない


NYNJ三村:井田さんが目指すソーシャルグッドな社会とはどんな社会ですか?

井田:自分がこうありたいと思う姿を否定されない社会です。ジェンダーロールといって、男性だから、女性だからこうしなければならない、という枠にはまった考え方を押し付けられるのではなく、自分が生きたいように名乗りたい名前で大切な人と家族になれる社会が一番いいと考えています。これは、他の国に比べて日本が一番遅れているところだと思います。

私は強制的な夫婦同姓制度を私の代で食い止めて、みなさんが結婚するときには改姓する/しないを自分で選べる社会を受け継ぎたいと思っています。

だから、バトンを次に渡すのはまだ嫌なんです。ジェンダーロールから自由になって誰もが生きやすい、みんなで分担できる社会にしていきましょう。

NYNJ三村:まだバトンを渡したくないという言葉がとても心に響きました。心強いです。だからこそ、私たち若い世代が一緒に声をあげていくことで、社会全体として変えていけるのではないかと思いました。

井田奈穂
若者とも意見を交わす機会が多いという井田奈穂さん。U30の私たちに伝えたいことは何か。

井田:若い世代の人たちが声をあげて「自分が望む日本の未来はこうなんです」「私たちはこれを変えてくれなければこの国ではやっていけない」ということを主張すると、政治家の意見も変わっていくと思います。自分が望むように結婚できなければ少子化にもつながりますし、国力も削がれてしまいます。実際に海外への頭脳流出も起こっています。

そういうことを気づかせるのは、当事者の声です。選択的夫婦別姓の法改正は、秋の衆議院選挙の争点にもなりますし、最高裁判所の判決も出る予定です。法改正されるか、されないか、ターニングポイントは今年の秋なので、恐れずに自分の声を出して伝えてほしいです。

取材を終えて


選択的夫婦別姓という当たり前にあるべき権利がない背景に、明治時代から続く家族国家観や女性天皇に関する議論があるということに大変驚きました。120年間もの間認められてこなかったという事実を、もう看過することはできません。そして、最も問題なのは世論が政治に反映されていないことだと強い危機感を感じました。一部の人が持つ考え方によって、社会の多くの人が不利益を被っている現状に疑問を覚えます。私たちが生きていく社会に必要な権利を私たちの将来のために求めたい、そのために声をあげたいと強く思いました。


井田奈穂◎選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局長。IT企業の会社員として勤務する傍ら、2018年にTwitterを通じて出会った当事者と、国会および地方議会へ法改正を訴える活動を開始。北海道から沖縄まで現在260名超のメンバーとともに72件(2021年5月現在)の意見書を国会へ送り、法改正に向けて当事者の声を届けている。選択的夫婦別姓・全国陳情アクション


連載:「U30と考えるソーシャルグッド」
過去記事はこちら>>

文=三村紗葵(NO YOUTH NO JAPAN)

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事