U30と考える「ソーシャルグッド」

連載「U30と考えるソーシャルグッド」 ゲストは、選択的夫婦別姓・全国陳情アクション事務局長の井田菜穂(写真=Yuriko Ochiai)

日本では、結婚するカップルのうち、96%は女性側が名字を変えている。夫婦同姓を義務付けている国は、日本だけだ。そんななか、ビジネスリーダーからも選択的夫婦別姓の早期実現を求める共同声明が出るなど、法制化への議論が活発化している。

U30世代の若者が社会に対して感じるモヤモヤを、第一線で活躍する大人にぶつけて、より良いヒントを探る連載「U30と考えるソーシャルグッド」。今回は、「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」の事務局長である井田奈穂さんに、NO YOUTH NO JAPANのメンバーが、選択的夫婦別姓の法制化や、自分の姓に選択肢を持つ意義について聞く。

前回の記事:コロナワクチンは有効か? 日本にも「スピード感」が必要な理由

好きな人と結婚したいと思った時、このままではどちらかが姓を変えなければならない。改姓の手続きは、精神面にも、キャリアにも大きな負担になる。これまで何十年も認められてこなかった選択的夫婦別姓は、どうしたら法制化されるのか。

望まない改姓は「自分の尊厳を捨てる社会的な死」


NO YOUTH NO JAPAN三村紗葵(以下、NYNJ三村):井田さんにとって、実際に結婚して姓を変えること、または変えなければならないということは、何を意味しますか。

井田奈穂(以下、井田):私は2回改姓をしているのですが、どちらも望まない改姓でした。初婚の時、夫になる人に私は名前を変えたくないと言うと、妻の名字になるなんて恥ずかしいと言われました。当時は自分の氏名を名乗るのは基本的人権であるといった知識がなかったので、仕方がないと思って変えましたが、慣れませんでした。自分が思っている自分の名前と違う名前で呼ばれ続けるのは、学校で望まないあだ名をつけられて、ずっとそれで呼ばれるような気持ちで、違和感がありました。

夫側の家から〇〇家の嫁と呼ばれることにもとても違和感がありました。私は名前を変えざるを得ないから変えただけだったのに、生まれた家から夫の家に譲渡されたように扱われることがショックでした。親戚の集まりに行っても、女性が立ち働くのが当たり前。酒に酔った親族男性にセクハラされるなど、自分はモノみたいに扱われている気分でした。改姓をしていなかったら「うちの家に入った嫁」という意識にはならず、違う扱いを受けていたのだろうか、と思いました。

2度目は40代での再婚だったので、改姓のために必要な手続きの量があまりに多く、とても苦痛でした。改姓手続きは遠方から戸籍謄本を一つ一つ取り寄せ、書類を書くなど大変な作業で、とても時間がかかります。望まない改姓は、穴を掘って自分の尊厳を埋めて土をかけているような気持ちになります。自分の姓を変えることは、社会的に一度死んで、もう一度別人に生まれ変わることなのだと実感しました。

法制化が進まない根幹は家族国家観


NO YOUTH NO JAPAN続木明佳(以下、NYNJ続木):世論では選択的夫婦別姓への賛成が過半数を占めており、先進国で認められていないのは日本だけですが、未だに法制化はされていません。これはなぜでしょうか。

井田:私も疑問で地元議員に聞いてみると、女性が男性と同じ権利を持っていることを国民が知ってしまうと、女性天皇が生まれる機運が出てきてしまうという意見があるそうです。とても驚きました。

文=三村紗葵(NO YOUTH NO JAPAN)

ジェンダー平等人権
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