世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

©Moomin Characters ™

森や湖に囲まれ、ムーミン谷の生活を体験できる施設が、埼玉県飯能市にあるテーマパーク「ムーミンバレーパーク」だ。

この夢の世界を誕生させるために必要だったのは、フィンテック グローバルによる"お金のテクノロジー"だった。



埼玉県飯能市の森や湖のほとり、約18万7,000㎡の広大な土地を活用し、2019年に地方創生の一環として誕生した「ムーミンバレーパーク」。発祥の地・フィンランド以外で初となるこのテーマパークは、ムーミンファンの巡礼の地であり、子どもたちの憩いの里。北欧風に改装された最寄りの飯能駅や周辺の公認ホテルなどとともに一大文化圏を構築し、地元経済の活性化に大きな貢献を果たしている。

しかし、この牧歌的な風景を成立させるためには、非常にリアルな"お金の問題"をクリアする必要があった。

そのために独自のソリューションを与えたのが、ブティック型(専門型)投資銀行に分類されるフィンテック グローバル(以下、FGI)である。ファイナンシャル面でテクノロジーを駆使し、事業を見事に軌道に乗せたFGI。吉岡尚子取締役に、同社が果たした役割について聞いた。

有意義な事業が資金問題で頓挫してしまうリアル


「社会に必要なよい事業(プロジェクト)は、日々誕生しています。ところが、そういった事業を担うスタートアップ/ベンチャーの大半が資金調達などの"お金"の問題でつまずいてしまうのです」

そう語る吉岡は、お金のプロ=公認会計士でもある。これまでさまざまな企業の経営のサポートを、ファイナンス面から行ってきた専門家だ。

「なかでも難しいのが、地方自治体が行う地方創生プロジェクトです。性質上、すぐに結果を求めることができないうえ、銀行や個人投資家にも理解されにくいからです。そのために暗礁に乗り上げてしまうことが非常に多いのです。FGIはそうした事業にソリューションを提供する"投資銀行"なのですが、その内容自体がわかりにくいと言われることもしばしばです」

そこで今回はFGIが社会経済に与えるインパクトについて、同社が実際に手がけた「ムーミンバレーパーク」事業を題材に、"お金の問題を一手に引き受ける"という業務内容を解説していく。

ムーミン谷実現のためのお金の問題を一手に引き受けたFGI


「プロジェクト自体はフィンランドのパートナー経由で縁があり、13年にスタートしました。もう10年近くたちます。多くの自治体が候補地として名乗り出るなか、ムーミン谷を再現するために重要となる、豊かな森や湖を併せもつ飯能市から強い誘致の意向をいただいて、始まりました」

ムーミンバレーパークを中心に、北欧のライフスタイルを体験できるワークショップスペースやカフェ・レストラン、ショップエリアなどを備えたメッツァビレッジを含めて手がける一大事業である。実現の仕組みは大きく分けて以下の3つだ。

①地元と二人三脚

運営はFGI子会社が行うが、その株主には地元・埼玉の企業等も多く迎え入れる。また、開発資金の多くは地域金融機関の協調融資により調達。さらにFGI自身もプロジェクトに投資を行う。

「地元・地域の人々と私たちの目的が一致して、一丸となって事業の成功を目指すことで、実現が加速すると考えました。銀行は確実に利益を得たい、投資家は多少リスクが増大しても、当たったときの大きな利益を望む。それぞれの思惑に合わせて証券化することで、さまざまな立場から"お金を出しやすい"構造に組み立て直したのです」

そうして最終的に得た利益は地元・地域に還元する仕組みを構築。域外に利益が逃げては、真の地方創生とは言えないからだ。

②価値コントロール

ムーミンのブランディング戦略を徹底し、幅広いキャラクターグッズを生み出して人気を高めていく。

「従来から、原画の高いアート性は多くの女性に支持されていますが、テーマパークの開業によって、より身近で親しみやすいキャラクターとして幅広い年齢層への浸透が進んでいます。すでに現在、街中でムーミンを必ず一日1回以上は見かけることがあるのではないでしょうか」

③版権コントロール(ライセンス事業)

「今回のコロナ禍による休業・時間短縮のように、テーマパークは必ずしも安定した収益を生み出せるとは限りません。そこで安定収益を実現するために、ムーミンのキャラクター版権事業も並行して運営することにしたのです」

19年時点で、グローバルで900億円を超えるムーミン市場だが、実はその半分近くが日本でのセールス。400億円規模となる国内ライセンス事業を行うことで、コロナ禍でも安定収益を確保している。

フィンテックはデジタルのみにあらず


こうしたフィンテックの力でムーミンバレーパークを成功に導いたFGI。通常はDXの文脈で語られることが多いことから、フィンテックという言葉は、仮想通貨に代表されるデジタルテクノロジーと解釈されがちだが、吉岡はデジタルであるかどうかが問題なのではないという。

「FGIのテクノロジーの中核にストラクチャードファイナンスがありますが、これ自体はデジタル技術というよりも、金融の仕組みを指します。実際に事業を進めていくとわかるのですが、中心にはいつも各ステークホルダーとの対話があります。説明すること、説得すること、興味をもってもらうこと。それらすべてに共通するアクションは、人間同士のアナログな対話であり、時間のかかることなのです」

FGIのコーポレートアイデンティティに「すべての産業界へ革新的なストラクチャードファイナンスの効用を浸透させる」というものがあるが、吉岡はその手法を、すぐに結果が出にくい地方創生などの社会課題解決にこそ使うべきだと考える。

「世のため人のためになる事業の火は、消してはならないと思うからです。そして地方創生はFGIの使命のひとつなのです」

現在、多くの自治体では、老朽化の進む公共施設への対策が急務となっている。さらに、通常の企業同様の会計方式・決算書導入を政府から求められるなど、自治体自体が転換を余儀なくされている。

「国土交通省資料によれば、自治体保有の不動産資産は約600兆円規模です。公民館の建て替えなどのプロジェクトには大きなお金が必要になります。そんなときに会計業務からコンサルティング、地域レンダー中心の資金調達、投資商品の組成・アレンジまで、独自のノウハウで包括的なソリューションを提供できるのがFGIです」

地方創生をサポートするうえで、全国的な社会問題でもある後継者不足に直面すれば、そこへのアプローチも行う。FGIの用意する包括的なソリューションは、必要ならばそこまでもパッケージする。

「後継者はいないけれど確実に社会的価値のある企業なら買い取り、事業として再構築します。もちろん未来を担うベンチャーへの投資も行っています。これからもファイナンシャルからのソリューションにより、世の中で必要とされる事業・プロジェクト、企業を支えることで、社会を変えていきたいと思っています」



フィンテック グローバル
http://www.fgi.co.jp



吉岡尚子(よしおか・なおこ)◎公認会計士。2001年に税理士法人に入社、その後、不動産投資企業を経て、11年にフィンテックアセットマネジメント入社、19年に代表取締役社長に就任。フィンテック グローバル取締役を兼職。

promoted by FinTech Global | text by Ryoichi Shimizu | photograph by Masahiro Miki | edit by Yasumasa Akashi

あなたにおすすめ