ヴァン・ド・コンスタンスは、ミュスカ・ド・フロンティニャン品種から造られる、甘口のデザートワインだ。手吹きガラスで作っていた当時の時代を再現した、オリジナルボトルに入れられている。
その造り方は、実に、時間とコストをかけたものだ。
まず、ブドウの収穫は、3か月間かけて徐々に行われる。時期により、酸が高いうちに早摘みしたブドウから、糖度が高くレーズン状態になったブドウまで、粒単位で選んで収穫したものを別々に醸造する。これにより、高い糖度ながら、酸が保たれた、複雑で濃縮したワインとなる。
筆者が畑を訪れたのは収穫真っただ中であったが、収穫済みのブドウの房もあれば、まだ木にぶら下がっている房も見られた(写真:ワイナリー提供)
糖度が高いため、アルコール発酵は、半年から1年かけて、ゆっくりと進む。その後、ワインは3年の長期間、数種類の木樽で熟成され、さらに6か月間休ませてから瓶詰めされる。
甘口ワイン、料理とはどう合わせるか
2020年に全日本最優秀ソムリエコンクールで優勝した、南アフリカ・ワインに詳しい井黒卓さんは、こう描写する。
「酸味のバックボーンがあり、ベタッとした甘さではないのがヴァン・ド・コンスタンスの特徴です。ブラッドオレンジ、マーマレード、はちみつ、ドライマンゴー、さらにショウガやターメリックといったスパイシーな一面もあり、複雑なワインです」
井黒さんが働く銀座の三ツ星レストラン「ロオジエ」でも、過去に提供した際に、他の名だたる甘口ワインと並べても、お客さんからの評判は抜群だったという。
さらに、このワインの凄さは、幅広い食事と合うことだと説明する。
「チャーシューのようなカジュアルな料理からオマール海老といった高級食材まで、幅広い食材と合わせることができます。甘口ワインは、デザートに合わせるなどポイントを絞らなければならないイメージがありますが、実は汎用性が高い。また、ミュスカは、華やかなブドウ品種ですが、ベトナム料理などアジアのスパイスとも相性が良いのです」