ハイヒールを脱いで、農場へ──淡路島の循環型ファームから、社会への問いを投げかける


今何ができるかではなく、社会のあるべき姿を描く


なぜパソナが、この事業にゴーサインを出したのか。それはパソナの企業理念である「社会の問題点を解決する」が関係しています。

パソナといえば、人材派遣ビジネスが思い浮かぶかと思います。でもこれは、創業当時にあった「女性の社会進出」という大きな課題を解決するための、手段の一つでしかなかったんです。

パソナは、その後も時代に合わせて様々な社会課題と向き合い、解決し成長してきた会社です。事業で培ったノウハウを活かしながら、現在は地方創生にも力を入れています。

私たち自身がタネノチカラの事業を始めた背景にも、「社会の問題点を解決する」という、強い思いがあります。

代表の金子はパソナ入社以前より常々「人の幸せや豊かさとは何か」、という問いについて考え続けていました。

学生時代から様々な仮説を立てていた彼が最終的に出した答え。それは、人間の豊さの根源は「食と健康」と大きな関わりがある、というものでした。

「食と健康」についてどんな課題があるのかと調べると、数多くの問題に行き着きます。現在私たちが当たり前にスーパーで買う野菜の元となる「種」、その安全性の問題は最たる例。

大量生産、大量消費のための作られた種は弱く、農薬や化学肥料に頼らざるを得ません。

数少ない有機農業も、遺伝子組み換え飼料を食べた牛の糞を肥料に使うことが多く、農薬や肥料等は輸入されたものが大半で、日本の食料自給率は実質ゼロ%に近いという現実。

固定種、在来種で種を繋ぎ、自分達の力で何にも依存せずに、食べ物を作る方法はないものか。本当に安心・安全だと思える食料を確保出来る力こそが、これからの社会には絶対に必要ではないか、と思い至りました。

とはいえ、ただ安全な野菜を作って売る、だけではない事業をやろうと。それは私たちが課題として感じていること、それをどう解決していくのかという「過程」を社会に発信していくことに意味があると思ったから。

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アースバッグハウスの前で、タネノチカラのメンバーと

当時の私は、毎日スーツを着て、8センチヒールを履いたバリバリの営業担当。他のメンバーも含め、農業の知識は皆無でした。

でも、できないことを並べるよりも、あるべき姿を描き、今できることに夢中になっていたら半ば強引に代表にプレゼンの機会を得ることができたのです。

パソナのビジョンである「社会の問題点を解決する」という、大きな視点と照らし合わせて、自分たちなりの社会課題と解決策を伝えた結果、「まずはやってみろ」と。2週間後には事業を開発する部署に異動、3カ月後には会社を設立していました。

パソナと私たちのミッションがつながったことで、会社を飛び出さずに事業を立ち上げられたのは本当にありがたいことでした。

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文=櫻井朝子

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